先週末、買い物に行った。彼氏がよく行くスーツのお店にも寄った。
そのお店はある街のメインストリートにあるけど、ちょっと古ぼったいかんじの店。気さくなおじさんとおばさんが経営している。いろいろなとこからセンスのあるスーツを仕入れているので見かけとは違い、結構お客さんはくる。

私はそのおばさんのキャラクターが結構好きで
「XXさん、そのスーツすっごくにあってる!」
「買わなきゃ後悔するわよ!」
「買わないの?そんなに似合っているのに買わないなんてばかげてるわよ」
なんて冗談交じりにいったりする

おじさんはおばさんにちょっと尻に敷かれてるかも・・・という感じのカップルだった。

ところが、先週末にその店に行くとおじさんの姿が見えなかった。

「先月なくなったのよ。脳腫瘍でね。」とおばさんが言った。

おばさんの話によると、おじさんは3ヶ月ほど前から頭痛を訴えるようになったそう、そして眼球内に出血も見られることもしばしばあったそうな。
そのつど、GP(かかりつけ医)に見てもらいに行ったが
「Paracetamol(アセトアミノフェン)を飲んで様子を見るように」と言われ続けていた。

ある日、店を閉めた二人はそれぞれの家へ帰ったが、おじさんとその夜から連絡が取れなくなったそうだ。
次の日の朝、店におじさんは顔を出さず、今までそんなことは一度も無かったそうで、不安に駆られたおばさんはおじさんに何度も電話をするがつながらない。
おじさんの近所の人に電話するとおじさんの車はいつもの場所に止まっているという。

あわてておじさんの家に駆けつけたおばさん。おばさんは鍵を持っていたけど、おじさんが用心のためにかけたのか、内側のロックがかかっていてドアが開かなかった。
異常な状況に、不安を覚え、おばさんは警察へ電話した。警察は着てくれたものの、明日まで様子を見るようにといって立ち去ってしまったそう。

ドアを蹴破った近所の人とおばさんがみたものは床に倒れて、すでに冷たくなっていたおじさん・・・。
そして解剖の結果、脳腫瘍が原因だった。

おばさんはイギリスの医療にすごくおこっていた。
異常な頭痛、眼球内の出血を訴えてなんどもGPに看てもらったにもかかわらず、一度も頭部の精密検査、CTもしてもらえなかったこと。
もしもGPがきちんと対応してくれていたら何か違っていたのではないかと・・・。
昨日までいっしょにすごしてきたパートナーをあっという間になくしてしまった悲しみとGPに対する怒りでいっぱいだった・・・。

「たった一ついいことといえば、彼は苦しい治療も、病院生活も送ることなくあっという間に逝ったことくらいかしらね・・・」
とおばさんが最後に言った言葉はおばさん自身を慰めているかのようだった。