先日、隣の市のNHSホスピタルへIntravenous Administration(静脈からの薬剤投与)のトレーニングにいってきた。
日本の私の働いていた病院では看護師が静脈注射、点滴、輸血など施行していたけど、イギリスでは静脈からの薬剤投与に関しては看護師はトレーニングを受けてからでないとできないのだという。他にも、採血、末梢からの静脈確保:べネフロンやサーフローなどの留置針、男性の尿道カテーテル挿入など、私は日本で当たり前のようにやっていたが、イギリスでは看護師はトレーニングを受けなければ実施することができない。

私の働くホスピスでは静脈注射はほとんど行われないため、静脈注射をできる看護師もほんの数人で多くの看護師はできない。
ホスピスで静脈注射をするケースは現在の所、輸血、輸血の際の利尿剤投与、そして高カルシウム血症に対して投与されるPamidronateくらい。輸血開始後の管理は看護師がしているが、いずれの場合も医師が投与している。

近年緩和ケアの概念も変わってきて、症状緩和目的で静脈からの薬液投与の機会も増えてきた。症状緩和のための化学療法も行われるようになってきた。
そして輸血も何年も前に比べると良く行われるようになってきたそう。
輸血をしてもそれが夕方または夜にずれ込んでしまって医師がいない時間帯に輸血終わるとルートをフラッシュできるスタッフがいないため、輸血は朝一番で開始され医師の勤務中に終わり、医師にルートをフラッシュしてもらうよう設定されている。(翌日も輸血がある場合、留置針を残しておくため生理食塩水でルートをフラッシュしておく。しかし、翌日に輸血・静脈注射をする予定がなければ留置針は輸血が終わり次第抜針している。)過去に何らかの理由で輸血がおくれてしまったために、このルートフラッシュのためだけに医師が居残っていたなんてこともあった。

そして創感染や肺炎に対しても静脈からの抗生物質投与も結構行われるようになったにもかかわらず、ホスピスで静脈注射ができる看護師がいないために、静脈からの抗生剤投与のためだけに近くのNHS病院へ患者を転送しなければならない。(一日2・3回の投与のを受けるために大抵数日病院に滞在することになる。)

静脈注射を受けるために病院へ転送される患者さんの負担を減らすため、そしてそのコスト削減のためホスピスでも看護師をトレーニングして静脈注射が受けられるようにしようというのだ。


ときどきPICC line(Peripherally inserted central catheter:末梢静脈から挿入された長期中心静脈カテーテル)やHickman catheter(体外ポートのついている長期用中心静脈留置カテーテル)が挿入された患者さんが病院から転送されてくることもあるが、ホスピスでは輸血、Pamidronateの投与、採血以外は使用していない。補液にも使っていない。

患者さんが食べれなくなること、飲めなくなることは症状の悪化から自然な流れである場合、補液は浮腫、痰や気管支分泌物の増加を招き患者さんにとって苦痛となるためホスピスでは補液は例外を除いて行われない。
補液を行う場合は、吐気、嚥下困難など何らかの理由の為に水分・食事摂取ができず、口渇など脱水症状による苦痛を訴えるケースなど。しかし、この場合でもホスピスでは静脈からは補液しない。

どのように補液するかというと、大抵夜間12時間の間に一リットルの生理食塩水の持続皮下注射が処方される。昼間は除去し、患者さんの日常生活に支障がない様にしている。
留置針は翼状針を使い、腹壁などに行うのだが、一リットルも皮下に入ったら痛くないのだろうかとか、投与部位が大きく腫れあがってしまうのでは?と心配で私は初めちょっと抵抗があった。
でも実際やっている患者さんに聞くと、開始直後は多少皮膚に違和感を感じるものの30分以上すれば特になにも感じなくなるという。そして結構吸収されていくので、サイトもはれぼったいような感じになるものの、それほど大きく膨れ上がったケースは見たことがない。
しかし、静脈とは違ってちょっとした角度、患者さんの体動などで滴下が変わりやすく時間通りに落とすのは困難。
ちなみにManual of Clinical Nursing Proceduresという看護の本を見たらこの持続皮下注射での補液は24時間以内のリミットは3リットルだそう。


Intravenous Administrationのトレーニングは講義が中心で、感染管理、説明義務、輸血、物品(カテーテル類、留置針、輸液ポンプなど)の説明、医薬品の説明、中心静脈カテーテル類の説明、そして薬液の計算方法など。

この薬液の計算方法、数学が好きな私にはたいして苦にならなかったのだが、一緒に参加したスタッフ(みなさんイギリス人)はこれがすんなりできずに大騒ぎ・・・。
イギリス人は計算が苦手なきがするのは私だけ???

例えばこんな問題。試しにやってみます?

1.生理食塩水1リットルを8時間で投与するよう処方されている。輸液セットは20滴/ml。1分間何滴で投与すれば処方どおり投与できるか?

2.Cefuroxime1.5gが四時間おきに投与するように処方されている。Cefuroxime1バイアルは750mgで最低注射用水6mlで溶解しなければならない。一回毎の投与時に何mlの注射用水が必要か?

3.Co-trimoxazole3200mgが一日二回投与の指示が出ている。Co-trimoxazole1アンプルは5ml、1ml中96mg含まれている。一回の投与量は何mlか?

答えが出せた人、コメント欄へどうぞ。プレゼントはありませんが・・・。