ホスピスというと個室をイメージする人が多いかもしれない。
日本にあるホスピスも個室が多いようだし。
私の働いているホスピスは2つ病棟があり、それぞれ10ベットずつ、合計20ベットある。
そのうち個室は7ベットのみ。
あとは4ベットの大部屋が2つ、3ベットの部屋が1つ、2ベットの部屋が1つ。
大部屋といっても部屋自体はかなり広くて、隣のベットとは少なくとも2メートル以上は離れていると思う。ベットの周りに面会の人が座っても広さ的には十分余裕がある。
個室にはターミナルケア目的の患者さん、とくに若い患者さん(家族が部屋に泊まりやすいように)、大家族の患者さん、夜間徘徊、不穏などの強い患者さん、感染症のある患者さんを優先的に入ってもらうようにしている。
しかし、いつもその希望に添えるわけでもない。
個室がいっぱいでターミナルケア目的の患者さんでも大部屋に入ってもらわなくてはいけないときもある。
そして、大部屋で患者さんが亡くなったとき、同室者にはスタッフが隠さずになくなったことを伝える。
数日前の夜勤で4人床の大部屋で患者さんが亡くなった。
ターミナルケア目的で入院していた患者さんで、息子さん、そのフィアンセ、そして奥さんに見守られてとても安らかに逝かれた。
ベットサイドに家族がずっとついていたのでカーテンは閉めてあったのでほかの同室の患者さんはみていなかったが。
翌日の朝、私は同室の3人の患者さんに昨夜その患者さんが亡くなったことを伝えた。
日本である講習会のときにこの大部屋での死と隠さずに伝えることについて
「今度は自分ではないかとショックを与えるのでは」ということを言われたことがある
たしかに、同室者の死はほかの患者さんにとってショックである。
はっきり言って、同室者の死をほかの患者さんに伝えるのはとても気が重い・・・。
しかし、大部屋の患者さんたちはお互い24時間同じ場所ですごしている仲間であり、患者さん同士、そしてその家族の人たちとも仲良くなっている。
仲良くなった人が突然ベットから消えたら・・・。
その死を伝えられなかったら・・・・。
それを隠されたら・・・・。
患者さんは死について話すことができなくなってしまうのではないかと思う。
死は隠すものではない。
誰にでも訪れるもの。
そして同室者の死から自分の死を意識し、そこから今までは自分の気持ちを表現できずにいた患者さんも死について深く話していけることもある。
大切なのはその伝え方だと思う。そしてその後のサポート。
私の場合、あわただしい雰囲気ではなく、落ち着いた雰囲気の中でゆっくり話すようにしている。
まずは、「実は・・・・悲しいニュースがあるんです」と。
ここで少し間をおく。このときに患者さんが私が同室者の死を伝えようとしていることに気づいていることもある。
「あそこのベットの○○さんなんだけど・・・・。」
「昨日亡くなったんです」
と、患者さんの反応を見ながら、ゆっくり、間をおきながら話していく。
「とても安らかに、家族と私たちに見守られて逝かれたんですよ」
と付け加える。
患者さんの反応はそれぞれ、まったく違う。
「次は自分の番なのか?」と聞いてくる人もいる。
「それは、私には分かりません。たぶん誰にも分からないですよ。」
私はたいていそう答えて「XXさんは、そう思うの?」と聞き返し、話を聞いていく
「安らかに逝けてよかったなあ・・・。自分もそういうふうに逝きたいなあ・・・」という人もいる。
「自分も眠りながら逝けるようにしてくれ」とお願いしてくる人もいる。
「○○さんはもう苦しまないね。よかった・・・」という人もいる。
「家族の人は大丈夫だった?」と心配している人もいる。
そしてほぼ7・8割の患者さんが
「教えてくれてありがとう」という。
ここで2年以上働いていて、大部屋で同室者の死を伝える機会は何度もあったが誰一人として
「何でそんなことを教えるんだ」と言った人はいない。
同室者の死を伝えたときのほかの患者さんの反応はスタッフ間の申しお送りでも話し合われ、その後みなでサポートしていくようにしている。
でも、大部屋だとプライバシーの確保が難しくなる。
大部屋で患者さんが亡くなるとき、たくさんの家族が付き添うこともあるが、そのような時は同室者の患者さんたちにその患者さんの状態がよくないことを伝えて理解を得るようにしている。
また、患者さんと周囲を気にせずにゆっくり話がしたいときなどもむつかしい。
動ける患者さんであれば、あいている部屋やQuiet Roomと呼ばれる静かに話をするための部屋に行ったりする。
でも、動くのが難しい患者さんもいるので、そのような時はカーテンやスクリーンを使ってプライバシーの確保に努めている。
大部屋で夜中遅くまでTVをみたい患者さんもいる。
そんなときはヘッドホンを使ってもらうようにお願いしている。
しかし、大部屋も悪いことばかりではない。
ホスピスというとターミナルケアのイメージが強いかもしれないが、ホスピスに入院してくるのはターミナルケアの患者さんばかりではない。
患者さんはターミナルケア目的以外にも、症状コントロール、レスパイトケア、リハビリテーションなどの目的で入院してくる。
症状コントロールはその名のとおり、不快な症状を緩和する目的で入院してもらうもの。
痛みが強い、吐き気が強い、などの症状を緩和し、落ち着いたら退院またはナーシングホームへ転院する。
レスパイトケアは主には患者さんのケアラーである家族に休養をとってもらうための入院。状況にあわせて1・2週間患者さんにホスピスに滞在してもらう。
家族がホリデーに行くとき、遠方に住むほかの家族に会いに行くときなど。
そしてリハビリテーションのための入院。ホスピス滞在中に理学療法、作業療法を受け、必要時には作業療法士が家に訪問し、(時には患者さんも一緒に家にいく)家の状況のアセスメントを行い、必要な介助器具の設置、ケアラーの派遣のアレンジを行い、退院してもらう。
ターミナルケア目的以外の入院の場合、患者さんは必ずしも寝たきりというわけではない。
自分でトイレまで歩ける人もいれば、ベット周りであれば自分でしたいことをできる人もいる。
そのため、そのような患者さんの場合逆に個室だと一人ぼっちで寂しい・・・という声も聞かれる。
実際大部屋の患者さんたちは結構仲がいい。スタッフも一緒に患者さんたちとおしゃべりしたり、冗談を言ったりもする。
患者さん同士が仲良く話したり、お茶しているのをみると、なんだかほほえましい・・・。
だから私はホスピスに大部屋があってもいいかなと思う。
日本にあるホスピスも個室が多いようだし。
私の働いているホスピスは2つ病棟があり、それぞれ10ベットずつ、合計20ベットある。
そのうち個室は7ベットのみ。
あとは4ベットの大部屋が2つ、3ベットの部屋が1つ、2ベットの部屋が1つ。
大部屋といっても部屋自体はかなり広くて、隣のベットとは少なくとも2メートル以上は離れていると思う。ベットの周りに面会の人が座っても広さ的には十分余裕がある。
個室にはターミナルケア目的の患者さん、とくに若い患者さん(家族が部屋に泊まりやすいように)、大家族の患者さん、夜間徘徊、不穏などの強い患者さん、感染症のある患者さんを優先的に入ってもらうようにしている。
しかし、いつもその希望に添えるわけでもない。
個室がいっぱいでターミナルケア目的の患者さんでも大部屋に入ってもらわなくてはいけないときもある。
そして、大部屋で患者さんが亡くなったとき、同室者にはスタッフが隠さずになくなったことを伝える。
数日前の夜勤で4人床の大部屋で患者さんが亡くなった。
ターミナルケア目的で入院していた患者さんで、息子さん、そのフィアンセ、そして奥さんに見守られてとても安らかに逝かれた。
ベットサイドに家族がずっとついていたのでカーテンは閉めてあったのでほかの同室の患者さんはみていなかったが。
翌日の朝、私は同室の3人の患者さんに昨夜その患者さんが亡くなったことを伝えた。
日本である講習会のときにこの大部屋での死と隠さずに伝えることについて
「今度は自分ではないかとショックを与えるのでは」ということを言われたことがある
たしかに、同室者の死はほかの患者さんにとってショックである。
はっきり言って、同室者の死をほかの患者さんに伝えるのはとても気が重い・・・。
しかし、大部屋の患者さんたちはお互い24時間同じ場所ですごしている仲間であり、患者さん同士、そしてその家族の人たちとも仲良くなっている。
仲良くなった人が突然ベットから消えたら・・・。
その死を伝えられなかったら・・・・。
それを隠されたら・・・・。
患者さんは死について話すことができなくなってしまうのではないかと思う。
死は隠すものではない。
誰にでも訪れるもの。
そして同室者の死から自分の死を意識し、そこから今までは自分の気持ちを表現できずにいた患者さんも死について深く話していけることもある。
大切なのはその伝え方だと思う。そしてその後のサポート。
私の場合、あわただしい雰囲気ではなく、落ち着いた雰囲気の中でゆっくり話すようにしている。
まずは、「実は・・・・悲しいニュースがあるんです」と。
ここで少し間をおく。このときに患者さんが私が同室者の死を伝えようとしていることに気づいていることもある。
「あそこのベットの○○さんなんだけど・・・・。」
「昨日亡くなったんです」
と、患者さんの反応を見ながら、ゆっくり、間をおきながら話していく。
「とても安らかに、家族と私たちに見守られて逝かれたんですよ」
と付け加える。
患者さんの反応はそれぞれ、まったく違う。
「次は自分の番なのか?」と聞いてくる人もいる。
「それは、私には分かりません。たぶん誰にも分からないですよ。」
私はたいていそう答えて「XXさんは、そう思うの?」と聞き返し、話を聞いていく
「安らかに逝けてよかったなあ・・・。自分もそういうふうに逝きたいなあ・・・」という人もいる。
「自分も眠りながら逝けるようにしてくれ」とお願いしてくる人もいる。
「○○さんはもう苦しまないね。よかった・・・」という人もいる。
「家族の人は大丈夫だった?」と心配している人もいる。
そしてほぼ7・8割の患者さんが
「教えてくれてありがとう」という。
ここで2年以上働いていて、大部屋で同室者の死を伝える機会は何度もあったが誰一人として
「何でそんなことを教えるんだ」と言った人はいない。
同室者の死を伝えたときのほかの患者さんの反応はスタッフ間の申しお送りでも話し合われ、その後みなでサポートしていくようにしている。
でも、大部屋だとプライバシーの確保が難しくなる。
大部屋で患者さんが亡くなるとき、たくさんの家族が付き添うこともあるが、そのような時は同室者の患者さんたちにその患者さんの状態がよくないことを伝えて理解を得るようにしている。
また、患者さんと周囲を気にせずにゆっくり話がしたいときなどもむつかしい。
動ける患者さんであれば、あいている部屋やQuiet Roomと呼ばれる静かに話をするための部屋に行ったりする。
でも、動くのが難しい患者さんもいるので、そのような時はカーテンやスクリーンを使ってプライバシーの確保に努めている。
大部屋で夜中遅くまでTVをみたい患者さんもいる。
そんなときはヘッドホンを使ってもらうようにお願いしている。
しかし、大部屋も悪いことばかりではない。
ホスピスというとターミナルケアのイメージが強いかもしれないが、ホスピスに入院してくるのはターミナルケアの患者さんばかりではない。
患者さんはターミナルケア目的以外にも、症状コントロール、レスパイトケア、リハビリテーションなどの目的で入院してくる。
症状コントロールはその名のとおり、不快な症状を緩和する目的で入院してもらうもの。
痛みが強い、吐き気が強い、などの症状を緩和し、落ち着いたら退院またはナーシングホームへ転院する。
レスパイトケアは主には患者さんのケアラーである家族に休養をとってもらうための入院。状況にあわせて1・2週間患者さんにホスピスに滞在してもらう。
家族がホリデーに行くとき、遠方に住むほかの家族に会いに行くときなど。
そしてリハビリテーションのための入院。ホスピス滞在中に理学療法、作業療法を受け、必要時には作業療法士が家に訪問し、(時には患者さんも一緒に家にいく)家の状況のアセスメントを行い、必要な介助器具の設置、ケアラーの派遣のアレンジを行い、退院してもらう。
ターミナルケア目的以外の入院の場合、患者さんは必ずしも寝たきりというわけではない。
自分でトイレまで歩ける人もいれば、ベット周りであれば自分でしたいことをできる人もいる。
そのため、そのような患者さんの場合逆に個室だと一人ぼっちで寂しい・・・という声も聞かれる。
実際大部屋の患者さんたちは結構仲がいい。スタッフも一緒に患者さんたちとおしゃべりしたり、冗談を言ったりもする。
患者さん同士が仲良く話したり、お茶しているのをみると、なんだかほほえましい・・・。
だから私はホスピスに大部屋があってもいいかなと思う。