ある方とイギリスの緩和ケアについてお話しているときにチャリティの話になったので自分なりにまとめてみた。
(長文になりますので覚悟して読んでくださいね。いつものことだけど・・・)
イギリスにあるホスピス、緩和ケア病棟は大きく分けてNHS(ナショナルヘルスサービス)、チャリティ団体、プライベートのいずれかによって運営されている。多くのホスピスや緩和ケア病棟はNHSとチャリティ団体で運営されており、患者さんの治療にかかる費用、滞在費は一切無料。プライベートのホスピスまたは緩和ケア病棟は全額自己負担または個人の加入している保険でまかなうことになる。
私の働いているホスピスはチャリティ団体によって運営されている。この団体が運営しているものとして、ホスピス(緩和ケア提供施設)が6箇所、神経系の疾患(多発性硬化症、脳梗塞、脳性麻痺、パーキンソン病、運動ニューロン疾患、交通事故や糖尿病性昏睡などによる脳障害・・・など)のケア施設が10箇所、老人ケア施設が1箇所、精神疾患のケア施設が1箇所、ホームケアサービス(国内一部の地域)がある。
この団体が施設または地域で無料でケアを提供するには莫大な費用がかかる。イギリスポンドにして年間約2700万ボンド(日本円にして約54億円:1ポンド200円で計算)かかるといわれる。そして政府などの公的機関からの援助を受けているので、それらを差し引くと年間約1200ポンド(約24億円)が必要となる。
その必要な費用はいろいろな形での寄付、遺贈、資金調達によってまかなわれている。
なかでも重要な役割を果たしているのがチャリティショップ。イギリス国内に住んでいる人ならきっと一度入ったことがあると思う。大きな町にはさまざまなチャリティ団体のショップがある。ここで売られているのはすべて寄付された物。家庭でいらなくなったり使わなくなったりした物、着なくなった服、読まなくなった本など。またチャリティ団体のオリジナルグッズなどを売っている。このチャリティショップで働くスタッフはマネージャー職を除いてみんなボランティア。自分の空いた時間を利用して無給で働いている。
週に何度もボランティアする人もいれば、週に一度、数時間だけという人もいる。
実は私もイギリスの看護師の免許を取る前はチャリティーショップでボランティアで週に1日、レジ係をしていたことがある。売られてたものは新品に近いものからガラクタに近いものまでさまざま。ボランティアスタッフも高齢の方がおおく、中には移動に介助がいるような人、少し認知症のある人などもいたがみんなで楽しく働いていた。
この団体のチャリティショップはイギリス国内に約430箇所あり、すべての店の売り上げは年間およそ1700万ポンド(約34億円)にもなる。しかし、店の維持費などに約1500万ポンド(約30億円)必要となるので実際の収益としては約200万ポンド(約4億円)となってしまう。
ほかにもホスピスで行われるバザーがある。私の働いているところでは月に一回大規模なバザーがあり、ここで売られるものもすべて寄付された物。服、靴、本、かばん、キッチン用品、食器、リネン類、絵画、家具、おもちゃまで、電化製品以外なら何でも売っているといったかんじ。このバザーのスタッフもみんなボランティア。
そしてホスピスで行われるイベント。代表的なものとしてサマーフェスティバル、ハロウィンの花火大会、クリスマス前のLights of Love(キャンドルをともし、家族や愛する人をしのぶ会)。今週末に行われるハロウィンの花火大会は大人気でたくさんの人が参加しこの広い庭が人でいっぱいになる。これらのイベントのスタッフもボランティアでまかなわれ、このイベントによる収益もホスピスの重要な収入となる。
忘れてはならないのが、会社やお店、人々からの寄付と遺贈。街頭募金、インターネットからの寄付、またホスピスで亡くなった患者さんの家族がお葬式のお花やカードを断る代わりにホスピスへ寄付を呼びかけることも珍しくはない。
またGift Aidというシステムがあり、イギリスで税金を払っている人が1ポンド(約200円)寄付するごとに、ホスピスが税収入庁に28ペンス(約56円)クレームすることができる。つまりイギリスで税金を払っている人が10ポンド(約2000円)寄付した場合、2.8ポンド(約560円)クレームすることができ、ホスピスのトータル収入は12.8ポンド(約2560円0となる仕組になっている。
また会社や個人がウオーキング、バーベキュー、ゴルフ大会などのイベントを開きそこでお金を集めてホスピスに寄付してくださることもある。
私の働くホスピスは歴史のある古い建物で広大な庭があるので、その一部を一般に貸し出して寄付を得ている。結婚式やクリスニング(洗礼の儀式)、カンファレンスなどに使われる。夏場の週末は庭で結婚式がよく行われている。
その歴史的な建物ゆえに、テレビドラマや映画の撮影にも使われることもある。約2年前、私がこのホスピスのインタビューに来たときはテレビのドラマシリーズ「POIROT」(邦題:名探偵ポワロ、日本ではNHKのBS放送で放送されていた)の「Sad Cypress」(邦題:杉の柩)の撮影が行われていた。
ほかにも映画の撮影に使われたりしている。
お金だけではない。ボランティアさんの力はホスピスの重要な原動力となっている。上に書いたようにチャリティショップやバザー、イベントはもちろんのこと、ホスピスのメインの電話受付、お花の世話、デイケアの手伝い・・・みんなボランティアが活躍している。
私もチャリティショップのレジ係以外にも週に一回病棟で夕方2時間ほどボランティアをしていた。患者さんや家族に飲み物を提供、各部屋のオムツや手袋、ゴミ袋などの物品の補充、キッチンの洗物などをしていた。患者さんの話し相手もしたかったが当時は英語があまりにもお粗末だったのであまり積極的になれず・・・。それでも私の話し相手になってくれた優しい患者さんはたくさんいた。
こうしてさまざまな形での収益や助けがホスピスを支えるちからとなっている。どれだけの人の善意でこのホスピスが成り立っているのか、計り知れないと思う。一つ一つ、一人一人のちからは小さいけれど、こうして集まって大きなちからとなっている。
残念ながらこれほどのちからがあってもこのチャリティ団体の運営は赤字である。その額は年間約400万ポンド(約8億円)とも言われる・・・。
寄付の習慣が薄い日本ではこのようなチャリティ団体の運営によるホスピスは難しいのではないかといわれるが、ボランティアの関心も高まり、さまざまなNPO組織が活躍するようになってきているから、きちんとした枠組みさえできれば可能ではないかと思っているのだが・・・。
いつか日本に帰ることになったら、これはやってみたいことのひとつでもある。
(日本に居つくかイギリスに居つくかもまだ決めていないけど・・・)
(長文になりますので覚悟して読んでくださいね。いつものことだけど・・・)
イギリスにあるホスピス、緩和ケア病棟は大きく分けてNHS(ナショナルヘルスサービス)、チャリティ団体、プライベートのいずれかによって運営されている。多くのホスピスや緩和ケア病棟はNHSとチャリティ団体で運営されており、患者さんの治療にかかる費用、滞在費は一切無料。プライベートのホスピスまたは緩和ケア病棟は全額自己負担または個人の加入している保険でまかなうことになる。
私の働いているホスピスはチャリティ団体によって運営されている。この団体が運営しているものとして、ホスピス(緩和ケア提供施設)が6箇所、神経系の疾患(多発性硬化症、脳梗塞、脳性麻痺、パーキンソン病、運動ニューロン疾患、交通事故や糖尿病性昏睡などによる脳障害・・・など)のケア施設が10箇所、老人ケア施設が1箇所、精神疾患のケア施設が1箇所、ホームケアサービス(国内一部の地域)がある。
この団体が施設または地域で無料でケアを提供するには莫大な費用がかかる。イギリスポンドにして年間約2700万ボンド(日本円にして約54億円:1ポンド200円で計算)かかるといわれる。そして政府などの公的機関からの援助を受けているので、それらを差し引くと年間約1200ポンド(約24億円)が必要となる。
その必要な費用はいろいろな形での寄付、遺贈、資金調達によってまかなわれている。
なかでも重要な役割を果たしているのがチャリティショップ。イギリス国内に住んでいる人ならきっと一度入ったことがあると思う。大きな町にはさまざまなチャリティ団体のショップがある。ここで売られているのはすべて寄付された物。家庭でいらなくなったり使わなくなったりした物、着なくなった服、読まなくなった本など。またチャリティ団体のオリジナルグッズなどを売っている。このチャリティショップで働くスタッフはマネージャー職を除いてみんなボランティア。自分の空いた時間を利用して無給で働いている。
週に何度もボランティアする人もいれば、週に一度、数時間だけという人もいる。
実は私もイギリスの看護師の免許を取る前はチャリティーショップでボランティアで週に1日、レジ係をしていたことがある。売られてたものは新品に近いものからガラクタに近いものまでさまざま。ボランティアスタッフも高齢の方がおおく、中には移動に介助がいるような人、少し認知症のある人などもいたがみんなで楽しく働いていた。
この団体のチャリティショップはイギリス国内に約430箇所あり、すべての店の売り上げは年間およそ1700万ポンド(約34億円)にもなる。しかし、店の維持費などに約1500万ポンド(約30億円)必要となるので実際の収益としては約200万ポンド(約4億円)となってしまう。
ほかにもホスピスで行われるバザーがある。私の働いているところでは月に一回大規模なバザーがあり、ここで売られるものもすべて寄付された物。服、靴、本、かばん、キッチン用品、食器、リネン類、絵画、家具、おもちゃまで、電化製品以外なら何でも売っているといったかんじ。このバザーのスタッフもみんなボランティア。
そしてホスピスで行われるイベント。代表的なものとしてサマーフェスティバル、ハロウィンの花火大会、クリスマス前のLights of Love(キャンドルをともし、家族や愛する人をしのぶ会)。今週末に行われるハロウィンの花火大会は大人気でたくさんの人が参加しこの広い庭が人でいっぱいになる。これらのイベントのスタッフもボランティアでまかなわれ、このイベントによる収益もホスピスの重要な収入となる。
忘れてはならないのが、会社やお店、人々からの寄付と遺贈。街頭募金、インターネットからの寄付、またホスピスで亡くなった患者さんの家族がお葬式のお花やカードを断る代わりにホスピスへ寄付を呼びかけることも珍しくはない。
またGift Aidというシステムがあり、イギリスで税金を払っている人が1ポンド(約200円)寄付するごとに、ホスピスが税収入庁に28ペンス(約56円)クレームすることができる。つまりイギリスで税金を払っている人が10ポンド(約2000円)寄付した場合、2.8ポンド(約560円)クレームすることができ、ホスピスのトータル収入は12.8ポンド(約2560円0となる仕組になっている。
また会社や個人がウオーキング、バーベキュー、ゴルフ大会などのイベントを開きそこでお金を集めてホスピスに寄付してくださることもある。
私の働くホスピスは歴史のある古い建物で広大な庭があるので、その一部を一般に貸し出して寄付を得ている。結婚式やクリスニング(洗礼の儀式)、カンファレンスなどに使われる。夏場の週末は庭で結婚式がよく行われている。
その歴史的な建物ゆえに、テレビドラマや映画の撮影にも使われることもある。約2年前、私がこのホスピスのインタビューに来たときはテレビのドラマシリーズ「POIROT」(邦題:名探偵ポワロ、日本ではNHKのBS放送で放送されていた)の「Sad Cypress」(邦題:杉の柩)の撮影が行われていた。
ほかにも映画の撮影に使われたりしている。
お金だけではない。ボランティアさんの力はホスピスの重要な原動力となっている。上に書いたようにチャリティショップやバザー、イベントはもちろんのこと、ホスピスのメインの電話受付、お花の世話、デイケアの手伝い・・・みんなボランティアが活躍している。
私もチャリティショップのレジ係以外にも週に一回病棟で夕方2時間ほどボランティアをしていた。患者さんや家族に飲み物を提供、各部屋のオムツや手袋、ゴミ袋などの物品の補充、キッチンの洗物などをしていた。患者さんの話し相手もしたかったが当時は英語があまりにもお粗末だったのであまり積極的になれず・・・。それでも私の話し相手になってくれた優しい患者さんはたくさんいた。
こうしてさまざまな形での収益や助けがホスピスを支えるちからとなっている。どれだけの人の善意でこのホスピスが成り立っているのか、計り知れないと思う。一つ一つ、一人一人のちからは小さいけれど、こうして集まって大きなちからとなっている。
残念ながらこれほどのちからがあってもこのチャリティ団体の運営は赤字である。その額は年間約400万ポンド(約8億円)とも言われる・・・。
寄付の習慣が薄い日本ではこのようなチャリティ団体の運営によるホスピスは難しいのではないかといわれるが、ボランティアの関心も高まり、さまざまなNPO組織が活躍するようになってきているから、きちんとした枠組みさえできれば可能ではないかと思っているのだが・・・。
いつか日本に帰ることになったら、これはやってみたいことのひとつでもある。
(日本に居つくかイギリスに居つくかもまだ決めていないけど・・・)