英国ホスピスコラム


イギリスの病院でマクミラン緩和ケア専門看護師
(Macmillan Palliative Care Clinical Nurse Specialist)として働くナースのブログ

日本の医療

外国人看護師・介護福祉士

日本滞在中、新聞で外国人看護師・介護福祉士の受け入れの賛否を尋ねるアンケート結果を見た。
「賛成過半数」という見出しだったが、Noと答えている人も42%。
そして、外国人からケアされることに不安があると答えているのが56%。

また、この新聞の記事のアンケートの中に「本で最期を迎えるときに見守ってくれる人が外国人でいいのだろうか」という意見がかかれていて、なんだか複雑な気分だった。

【私も言いたい】外国人の介護福祉士・看護師 賛成過半数



日本人である私はイギリスでは”外国人の看護師”になる。
イギリスは日本と同じ島国だけど、過去に多くの植民地を持っていたこともあり、イギリスに住む外国人は日本に比べてはるかに多い。
そして、医療現場で働く外国人の割合もかなり高い。
特にNursing Homeなどの長期療養型の老人看護の施設などはスタッフのほとんどが外国人なんてことも珍しくない。
病院でも外国人がいない職場はまず無いのでは?
わたしの職場はイギリス人スタッフが多いものの、外国人は私を含め、5人いる。

今まで看護師として私は3箇所で働いたことがある。
患者さんに外国人だからあきらかに拒否されたことは無いが、私がまだイギリスで看護師になりたてで、英語もまだスムーズに話せなかった頃、嫌そうな態度をとられたことはある。
まあ、あの頃は英語がかなり怪しかったので、無理もないと思う。


私は緩和ケアで働く中で、最期を看取る機会はたくさんある。
でも「外国人のあなたに看取られたくない」と患者さんや家族に言われたことはない。

しかし、日本の医療関係者から
「外国人なのに、イギリス人の終末期のケアってちゃんとできるの?」
といわれたことが何度かある。
文化や習慣の違いからそう思えるのも仕方ないのかもしれない。
死生観だって違う。

でも人それぞれ考えが違うように、その人にあった看護というものをしていくことができるのであれば、問題ないのではと思う。

外国人が多いお国柄のおかげで受け入れられているのもあると思うが、コミュニュケーション能力に問題が無く、ちゃんとした看護技術と知識があれば、外国人だろうが、イギリス人だろうが患者さんや家族は受け入れてくれていると私は感じている。

イギリスの場合、外国人医療者を受け入れなければ、医療サービスがまわっていかないような状況になっているというのもあるからかもしれないけど・・・。

外国人として働いている身としては、たんに「外国人」という理由だけで毛嫌いされるのはちょっと悲しい・・・と思ったのでした。



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看護の日によせて

5月12日は何の日かご存知ですか?

近代看護を築いたフローレンス・ナイチンゲールの誕生日。
そして彼女の誕生日にちなんで5月12日は「看護の日」なんです。

日本看護協会のウエブサイトを覗いてみたら、今年のメインテーマは「看護の心をみんなの心に」だそうです。

それよりも私が注目したのは「看護職のキャリアとプライベートのベストバランスを」という言葉。

私が日本で働いていたのはすでに10年近くも前のことだ。
始業時間前に出勤し仕事の準備を始め、仕事中は立ち止まることなく走り回っていた。規定の就業時間に仕事が終われたのは、月に何日あったかないか・・・。
有休などほとんどとらせてもらえなかった。
休みの日には勉強会に行ったり、症例研究のレポートをまとめたり。
日本で働いていた間の4年の間、私の時間のほとんどか仕事に費やされていた。周りもそうだったから、疑問も感じず、それが当たり前なのだと思っていた。

でも、そんな生活をしていては身体も心も悲鳴を上げてしまう。
看護に対して高い志を持っていても、身も心も疲れ果てて辞めていく看護師はどれだけいるのだろう。

私はイギリスで看護師になって6年になる。
私がイギリスで働くことを選んだのは仕事とプライベートを両立できると思うから。
フルタイムで働き、キャリアアップのため大学で勉強しているので大変だけれど、それでもプライベートの時間はある程度確保できているし、旅行にもいったりして好きなことができている。
これからも看護師を続けていける自信はある。


看護師は使い捨てではない。看護師寿命は長くあって欲しい。

「一生ものの資格を、一生ものの仕事にしよう。」というキャッチコピーも看護の日にちなんで掲げてある。

一生ものの仕事にするには、日本の看護師さんたちをもっと休ませて欲しい。
身体と心を休めることで、心にも余裕が出てくるだろう。
仕事も楽しくなるだろう。
仕事に対する意欲も高くなるだろう。

看護という仕事はつらいだけの仕事であってはならない。
やりがいをもて、とことん追求し学びながらできる魅力のある仕事だと思う。

だから高い志を持って、看護という仕事を選んで、勉強して、免許を取ったたくさんの看護師さんたちが身も心も疲れ果てて現場を離れていくのが残念でならない。

日本の看護師の労働状況の改善が進み、多く看護師が一生ものの仕事として続けて行こうと思えるような環境になることを心から願っている。




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福島県立大野病院産婦人科医逮捕事件 無罪確定

福島県立大野病院産婦人科医逮捕事件で、29日、福島地検が控訴断念を発表した。
これで加藤医師の無罪が確定した。

加藤先生にとってはつらい日々でしたでしょう。
それでも「これからも地域医療に私なりに精いっぱい取り組んでまいります」とコメントされた先生の医療に対する思いは素晴らしいと思います。

私は医師でも産婦人科の専門ではない。
だから、この帝王切開の手術についてくわしく分析することはできない。

私が許せないのは不可抗力なケースであったにもかかわらず、患者が死亡という結果をもとに、懸命に患者を救おうとした医師を刑事裁判で罪に問われたこと。

イギリスに来て、日本で働く多くの医療者がどれだけ勤勉か思い知らされた。

日本の医療者はわが身を削り、プライベートの時間を犠牲にし、休みも十分にとらず、無我夢中で働いていると思う。
こんな過酷な勤務状況なのに、志高く、一生懸命働いている医療者がいる。

この裁判によっていったいどれだけの医療者の医療に対するモチベーションが下がってしまったか・・・。
医療者のこころに暗い影を落としてしまったか・・・。


でも、前向きに捉えるならば、この裁判で浮き彫りになった問題を改善し、今後の日本の医療が良くなることを願っている。





前回の記事で控訴取りやめの署名をしてくださった方々。
ありがとうございました。




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福島県立大野病院産婦人科医逮捕事件 無罪判決

大切な方を亡くされたご遺族には心からお悔やみを申し上げます。

昨日8月20日、福島県立大野病院産婦人科医逮捕事件の福島地方裁判所で無罪判決がでた。

インターネットの速報で無罪判決を知ったときは、ほっとして涙がでた。
無罪判決は当然の結果であったと思う。

この裁判に関してはわたしの情報源は、各種新聞のネット版のニュースや医師が書いているブログを中心に、すべてインターネットからだった。

私は産婦人科は専門ではない。
でも、患者さんのために力を尽くされた医師が、患者さんが死亡したからと逮捕され、刑事裁判にかけられたという状況はゆるせなかった。

逮捕された加藤医師にとっては本当に苦しい日々だったと思う。
この裁判を受けて医療のさまざまな問題が浮き彫りになってきたのも明らか。
ここから学ぶべきものは沢山ある。
この裁判はムダではなかったはず・・・。

そして、必要なのはこの裁判の控訴ではなく、この裁判で浮き彫りになった問題を改善するために努力していくことだと思う。


周産期医療の崩壊をくい止める会のホームページで控訴取りやめの要望の署名を募集しています。

(以下 周産期医療の崩壊をくい止める会のホームページより抜粋させていただきました)
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控訴取りやめ要望署名募集(2008/8/20)
 検察庁が本件判決に控訴しないことを要請するために、本会は署名活動を再開します。署名は総理大臣、官房長官、法務大臣、検察庁長官、国家公安委員会、厚生労働省など関係各位に提出予定です。この1週間が勝負です。ご協力お願い申し上げます。

 別ホームページの署名投稿フォーム(別ウィンドウで開きます)で署名を募集中です。

署名投稿フォーム(別ウィンドウで開きます)

http://spreadsheets.google.com/viewform?key=pVSu1jKcdiL1dT7HDioKlfA

 ご賛同頂ける方でメールを送信される場合、医療関係者の方は、お名前、御所属、専門分野をmailto:perinate-admin@umin.ac.jp までご連絡下さい。医療関係者以外の方は、その旨ご記載の上、ご氏名のみをご連絡賜れれば幸いです。 

 署名受付は郵送でも受け付け予定、署名書式を準備中です。


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皆様のご協力をよろしくお願いします






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