英国ホスピスコラム


イギリスの病院でマクミラン緩和ケア専門看護師
(Macmillan Palliative Care Clinical Nurse Specialist)として働くナースのブログ

Nursing in UK

久々の一言。

ご無沙汰してます。
このブログ、ほとんど、月一回更新です・・・。

この前、緩和ケア病棟で働いていたときのこと。
80代後半の女性の患者さんの薬の投与に行った。
耳が遠い方と聞いていたので大声で
「インスリン打ちますよ。」と身振りで注射を打つ仕草をしてみた。

「なんだってー?」と聞き返される。

「インスリンです!インスリン!」と何度も言ってみるが、ビックリするほどまったく通じない。

注射器をみせて、身振り手振りで伝えようとしてもダメ。

「インスリンだよー。いつもご飯の前に打つ注射だってば」といってもダメ。

こんなやり取りを繰り返してると、その患者さんが
「Are you talking in English?」と言われた。

久々の一言に思わず大笑い。
「I hope so」といっておきました。

イギリスに来たころは、こういう一言でショックと悔しさのあまり泣きそうになったこともあったっけ。
わたしの英語もまだまだ完璧ではないし、日本人アクセントも強いので、普段でも聞き返されることもある。
でも、こんな風におもいっきり笑い飛ばせるようになったのは、神経が図太くなったのか。


ちょうど通りかかったヘルスケア・アシスタント(イギリス人)に通訳をお願いした。
その患者さんはヘルスケア・アシスタントの話すことはすぐに理解していた。
わたしの英語もまだまだ修行がたりないということか・・・・。



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訪問看護の日々

ごぶさたしてます。
DegreeのDissertationが無事に提出できたとたん、一気に気が抜けてしまって・・・。
仕事が終わると家でTV見たり、本を読んだり。今までできなかった分、だらだらと過ごしていました。


訪問看護の仕事のほうは少しずつなれてきて、とても優しい上司や同僚に助けられながらぼちぼちやってます。

こちらの訪問看護は主にはGP(かかりつけ医)の診療所と提携している。
GPから訪問の依頼を受けたり、病院から患者さんが退院するときに連絡を受けてケアを引き継いだり、また患者さん本人や家族から依頼があって患者さん宅を訪問したりする。

この訪問看護もNHSのサービスの1つなので、患者さんたちは無料で訪問看護のサービスが受けられる。
訪問看護の大前提は・・・・GPの診療所にこれない、家の外に出ることができない人のみ。

主なサービスは慢性疾患の看護、老人看護、緩和ケアの提供。
具体的には・・・
・下肢の潰瘍、創傷、じょく創などのドレッシング交換
・採血
・尿管カテーテルの管理
・在宅の緩和ケア患者さんのサポート
・糖尿病の管理(インシュリンが自己投与できない人のサポートなど)
・失禁のある患者さんのアセスメント・サポート
などなど。


1ユニット=15分と言う割り当てで、移動時間を含めて一日の仕事量は20ユニットまでになっている。
時々忙しくはなるものの、病棟勤務の時のようなばたばた感はあまりなく、一人ずつの患者さんにしっかりと向き合う時間が持てるので、訪問看護の仕事も悪くはないな・・・と思っていた。




しかし。

昨日、私の働くエリアは午後からとんでもない大雪に見舞われた。
しかも先週の雪が解けかけで凍って路面が凍結していたところへの大雪だった。そして私にとって災難としか言いようのない日だった・・・。

まず、朝一番に行った訪問先で道を間違えたため狭い道をバックしていたら、凍結した路面に滑って左のサイドミラーを破損。
被害額、約200ポンド。

訪問エリアは坂の多い村なので、凍結した坂を車で下るのは危険だと思って、車を止めて患者さん宅まで徒歩で向かったところ。
滑って転び、しりもちついた。
「おしりに脂肪がたっぷりあるから怪我しなくてすんだよ♪」と患者さんに報告。

午後から雪がどんどん積もりだしたが、患者さん宅を訪問するためゆっくりと車で走っていたら、悪がき3人組に雪の玉を車にぶつけられた。
思わずあたまにきて「ふざけんなー!!!」と叫んでしまった。
何年イギリスで生活しようが、とっさの一言は日本語でした・・・。

午後2時ごろ。患者さん宅から次の訪問先へ行こうとしたところ、雪にすべり車が動かなくなる。少々パニックしたけど、何とか脱出。

午後3時ごろ。チームリーダから電話。これ以上の訪問は危険なので帰宅するようにいわれる。患者さん宅から家に向かって帰り始めるが、道路の積雪はすでに10センチ以上。ひやひやしながら家に向かう。みんな時速5マイルくらいののろのろ運転。
わたしの住むエリアはそれほど雪が積もってなくて安心した。だけど、家が近くなったとき、家の鍵をオフィスにおいてきたことに気づく・・・。

自分のおろかさをのろいながら、大雪の村へ逆もどり。
村の中の積雪はすでに20センチくらい。坂の多い村で、途中雪遊びをしていた親子に迂回を勧められ、なんとかオフィスのあるGP診療所に到着。

そして車のガソリンがなくなりそうだという警告ランプ点灯。なのに所持金2ポンド。(これではガソリン2リットルも買えません・・・・)
普段の日だったら警告ランプが点灯しても家までは何とか到着できる距離だけど、この雪で帰るのに何時間かかるかわからない。
雪の上にガス欠で立ち往生になりかねない。
こまっていたら診療所に残っていたやさしいGPがお金を貸してくれた。

村のガソリンスタンドまで何とかたどり着き、ガソリンを入れて、家に向かったけど、のろのろ運転でいつもの4倍の時間がかかった。
でも無事に家に着いたときは本当にほっとした。


わたしの職場のエリアがどれだけひどい状況だったかをTVのニュースでも取り上げられていて、こんな状況で仕事行ったら絶対事故起す・・・と思っていたら。(イギリスにはスノータイヤやチェーンはほとんど売っていない)

今朝、チームリーダーから電話があって
「今日は危険だから仕事に来なくていいよ。お休みして」と言われた。
私は水曜日が休みなので、今日を休みにして水曜日出勤することにした。

雪が解けていることを願うばかり・・・。
イギリス在住の皆さん雪道での運転は十分に気をつけてくださいね。




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英国の新型インフルエンザ事情

日本が新型インフルエンザで大騒ぎの頃、ここイギリスでは感染者はいたものの、あまり大騒ぎにはなっていなかった。

手洗いをするように、くしゃみをするときは手でおおう、使ったティッシュは捨てる(ティッシュを再利用する人が多いから・・・)などの予防策は言われていたものの、感染が疑われたら家での療養を勧めていた。
日本で売り切れになるほどだったマスクについてはたいした効果が無いような言われ方もしていた。

しかし・・・

イギリスでの新型インフルエンザの感染者数はどんどんふえて約10万人以上が感染しているのではないかとも言われている。新型インフルエンザによる死者は30人。
ニュースでも連日新型インフルエンザ関連のニュースが報道されている。

そして、7月23日増え続ける感染者に対応するため、イングランド(スコットランド・北アイルランド・ウェールズはのぞく)在住者に対して、新たな対策National Pandemic Flu Serviceが発表された。

システムとしては新型インフルエンザを疑うう症状がある人は自宅待機。
GP(かかりつけ医)に連絡するのではなく、専用電話に電話するかNational Pandemic Flu Serviceのウエブサイト(www.direct.gov.uk/pandemicflu)へアクセスし、症状チェックを行う。

ただし、妊娠中の女性や慢性疾患など持病がある人、1歳以下の子供、症状が急激に悪化した人、または発症から7日(子供は5日)経過しても症状に改善が見られない場合はGP(かかりつけ医)に連絡することになっている。

この電話またはインターネットの症状チェックで新型インフルエンザであると判定された場合、抗インフルエンザ薬の受け取りのための番号が発行される。
家族または友人がその番号を持って、近くの薬局などの受け取り所へ行き薬を受け取るというシステム。
つまり、医師による診察無しで抗インフルエンザ薬が入手できる。
そのために、このシステムが悪用されるのではという懸念はあるものの、激増する感染者に対応するため、やむをえないようだ。

このシステムが本格的に開始された初日には5500人以上の人が新型インフルエンザだと判定されて抗インフルエンザ薬が処方されたらしい。

はたして、このシステムが功を奏するのか・・・。
それとも悪用されるまたは不都合が生じてストップするのか・・・。
注目したいと思います。


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聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥

イギリス各地医療機関ではホリデーシーズンになるとどこも人手不足に陥る傾向がある。
みんなが有休をとるから。
特に普段ぎりぎりのスタッフ人員でまわしているところなんて、とんでもないことになったりする。

人手が足りなくなると、派遣会社にSOSを出すことになる。
そして派遣会社を通してやってくるスタッフをエージェンシーナースと呼んでいる。

このエージェンシーナースを派遣してもらうと、凄くお金がかかる。
だから、うちの職場ではエージェンシーナースを使うのは最後の手段的な選択となる。

そしてこのエージェンシーナース、はっきりいって私は凄く仕事ができるひとには出会ったことがない。

わたしの職場で夜勤スタッフの有休のカバーのためにエージェンシーーナースを使わざるを得ないことがあった。

このエージェンシーナースたち、なんと1週間以内に誤薬を5件以上おこってしまった。(同じ人だけではないらしいが・・・)

これでは患者さんの安全も確保できないし、ケアの質の問題もあり、エージェンシーナースは投薬行為をさせないことにした。
その場合、もう一人の常勤の看護師がすべての患者の投薬をすることになっていた。

ある日、私は夜勤スタッフが有休をとりたいというので、変わりに夜勤をしていた。
そして、エージェンシーナースと働いていた。
そのエージェンシーナース、投薬行為ができないことにものすごく腹を立て、私を無視しようとするので
「これはわたしの判断ではない。私だってあなたに投薬してもらったらどんなに仕事が楽になるか。納得いかないのならマネージャーに電話してくれ」と言ったくらいだ。

そのエージェンシーナース、うちのマネージャーに文句を言うのは気が引けるのか、そこで引き下がった。



そして、わたしの休憩中、彼女の担当患者さんが痛みがあるので、鎮痛剤を投薬してくれとやってきた。

処置室にいくと、すでに患者さんの投薬チャートと麻薬の記録簿が準備してあって、ページも開いてあった。
(イギリスのホスピスには病棟に麻薬庫があり、病棟で使う麻薬がすべてそこに入っている。そこから投薬チャートの指示通りの麻薬を取り出し、記録簿に患者名、使用量、残量を記入。これらの作業は看護師2人でチェックし、患者に投与している。)

”Oxynorm 5-10mg X6”(Oxynormを5-10mg 6回まで24時間以内に投与してよいという指示)
があった。

しかし彼女が開いていたページはOxycontin MR。

簡単に説明するとOxynormとOxycontionはどちらもOxycodonという麻薬だがOxynormは即効性があり、患者さんが痛みがあるときにすぐ使うもの。
Oxycontin MRはゆっくり作用するタイプで、12時間おきに定期的に服用するもの。

「これは違う薬だよ。今はOxynormを使うべき。OxycontinとOxynormの違い知ってる?」
とさらりと聞いてみた。

「知ってる」とあっさり言われたので、単なる勘違いかもしれないし、あまりくどくど言ってまた彼女が機嫌悪くなるといけないし、と思って問い詰めたりはしなかった。




そして数日後。
そのエージェンシーナースとわたしの同僚との誤薬が発覚。
Oxynormを使うべきところで、二人はOxycontinを使ってしまったのだ。
幸い、定期で飲んでいるOxycontinの次の内服時間も数時間後で、患者さんに害は無かった。

麻薬類は二人でチェックしないと使ってはいけないので、二つの薬を混同してしまったわたしの同僚にもミスはあるのだが。
あのとき、私がもっと問い詰めておくべきだったか・・・と悔やまれた。


しかし・・・。

エージェンシーナースだって子供ではない。
看護師である。
あのときわからなかったのであれば、ちゃんと聞いて欲しかった。



ふと思い出した「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」

看護においてわからないことを聞くのは恥ではないのだが・・・。
わからないことを聞かないというのは、自分が知らないことを学ぶチャンス、新しい知識をえるチャンスを失うことになる。

看護では「聞くは学びのチャンス、聞かぬは一生の恥」とでもいえるんじゃないかな。

私はわからないことをわからないから教えてほしいといえる看護師でありたいと思う。




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イギリス歯医者初体験

何年も前、語学留学したときに日本で歯科医をしていた人と友達になった。
彼女曰く「イギリスの歯科医療は恐ろしく遅れている。」

イギリスには国の医療制度NHSがあり、無料で医療が受けられる。(薬の処方箋代は払う必要あり)
歯科医療も昔はこのNHSにカバーされており、割安な値段で治療が受けられていた。
しかし、最近NHSの患者を扱う歯科医が激減、プライベート(全額自己負担)でしか受けられなくなってきている。

歯科医療をプライベートで受けるということは、かなり高額になることもある。
「こっちで高額な歯科医療費を払うくらいなら日本に飛行機で帰って治療を受けたほうがいいくらい」なんてうわさも聞いたことがあったので
プライベートの歯科医療=めちゃくちゃ高い!と思っていた。

イギリス人の中にはNHSとして歯科医療が受けられないのでここ数年、歯科医にかかっていない人がかなりいるのだとか。

もともと歯医者が嫌いな私。ここ5年近く歯医者にかかっていなかった・・・。


ところが、数日前の仕事中。
口の中になんだか異物が・・・。
吐き出してみたらなんと小さな歯のかけら。
あわてて舌で確かめてみたら下の2番目の奥歯が欠けているよう。
ちいさな隙間ができてしまったようだから、ほっておいたら虫歯になってしまうだろうから歯医者に行くことにした。

NHSの患者を扱っている歯医者なんて見つからないだろうと思いつつも、同じ街に住む職場の人に聞いたら隣町の歯科医にNHSの患者として最近登録できたとのこと。

翌日、早速その歯科医に電話で問い合わせ。
「もうNHSの患者は受け入れてません。」とのこと。

その後、インターネットで調べた歯科医を何軒かあたってみたけど、どこももうNHSの患者は受け入れていないという。

仕方ないので近所の歯科医にプライベートで看てもらえるか聞いたら、即日で予約を入れてくれた。
「初回診療費は21ポンドかかり、治療費は行う前にいくらかかるか説明します」とのことだった。


変な風にされたらどうしよう、高額な治療費になったらどうしようなんて不安を抱えながら診療所へ向かう。

受付に行くと名前を言う前に
「今朝電話をくれた方ですね。この質問表に答えてください」
と質問表を渡された。

質問事項は既往歴、感染症などのYes・Noのチェック。
受付に書き込んだ質問表を渡すと座って待つように言われた。

待つこと、数分。
若い男性がやってきて
「Miss(私の苗字)?」とにこやかに聞いてきた。
「歯科医のXXです」と自己紹介された。
歯科助手さんではなく、待合室まで歯科医じきじきのお迎えにちょっぴりびっくり。

椅子に座り、歯が欠けてしまったことを説明した。
「う~ん。たしかに欠けてるね。レントゲンをとって、歯の状態を見たら詰め物をすれば大丈夫だと思うよ。一時的な仮の詰め物だったら20ポンド。ちゃんとした詰め物だと60ポンドになりますが、どうします?」
問いわれた。

一時的な詰め物なんて、すぐに取れたら嫌だから、しっかりやってもらうことにした。

「では麻酔をしますね。口をあけてください。口の中が変な感じになりますけど、痛みは感じなくなりますから」といわれて口をあけていたら、ほほの内側に違和感・・・。
日本では麻酔は歯茎にされたような記憶があるけど?

そして、レントゲンをとられて、レントゲンが出来上がるまで待合室で待つように言われた。
待っている間、顔の左半分がはれぼったく感じてきた。さらに下唇や舌の半分も麻痺している感じ。

10分ほどで診察室に呼び戻された。
お決まりの歯を削るいやーな音に耐えて治療終了。
思ったよりもスムーズだった。

今回の治療費60ポンド。日本円にして約1万2千円。
日本円にするとすごく高い気がするけど
予想していたほど高くなくてほっとしたし、一回の診療ですべて終わったから気持ち的にもすごく楽だった。
(日本でちょこちょこ治療されて、何回も歯医者に行かなくては行けなかったのがすごく嫌だったので・・・)



でも、困ったことがひとつ。
麻酔が効き過ぎ!!量が多かったのか?!
治療が終わってうがいするときも口がうまく閉じれなくて、水が麻酔が効いているほうの口角からだらだら流れてしまってうがいなんてできたもんじゃなかった。

麻酔を打ってから3時間も顔の半分、下唇と舌の一部が麻痺したまま・・・。
おまけにこの間、うまく喋れなかった。

おかげで友達のうちでランチだったのにみんなと一緒に食べれなかったし、おなかぺこぺこになってしまった。




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