まだ若い患者さんだった。
サム(仮名)は去年癌を発症し手術や化学療法をしたが、癌の進行は止まらず、積極的治療ができない状態となり緩和ケア病棟へ来ていた。

サムには何年もともに過ごしたパートナーがいた。
お互いを尊重しあい、支えあい、素敵なカップルだった。

サムはどんどん状態が悪くなり、意識レベルも低下していった。
一日のほとんどを眠って過ごすことが1週間近く続いた。
いつ亡くなってもおかしくないと思われていた。

「こんなにがんばったし。もう逝ってもいいよ、って思うんだけどね。」と悲しそうな笑顔でサムのパートナーは言った。

そんな中、サムのパートナーの誕生日を5日後に控えていた。
スタッフの中には「サムはきっと彼女の誕生日をまっているんだよ」といっていた。
でもサムのパートナーは「わたしの誕生日なんて待たなくていい。サムにはもう苦しんで欲しくない」と言っていた。


サムのパートナーの誕生日、病棟スタッフはバースディーケーキを用意した。
サムの両親、友達もやってきてみんなでお祝いした。

そして・・・・
何日も眠り続けていたサムが目を覚ました。
その日がパートナーの誕生日だと知ると
「Happy Birthday. I love you.」と言った。

スタッフ誰もが、サムが目を覚ましたことに驚いた。
他にも二言三言、会話をしたいたが、意識は朦朧としているようで、再び眠っていった。

その2日後、サムは息を引き取った。


サムはいつも礼儀正しくて、優しい人だった。
自分がつらいときでもなり続けるナースコールを聞いて
「僕はもう大丈夫だから。忙しいでしょ、行っていいよ。」と言ってくれるような人だった。

きっとパートナーに最後に伝えたかったことを言うために目を覚ましたのかな、と思った。
いつもパートナーを残して逝かなければならないことを気に病んでいたから・・・。



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