イギリス各地医療機関ではホリデーシーズンになるとどこも人手不足に陥る傾向がある。
みんなが有休をとるから。
特に普段ぎりぎりのスタッフ人員でまわしているところなんて、とんでもないことになったりする。

人手が足りなくなると、派遣会社にSOSを出すことになる。
そして派遣会社を通してやってくるスタッフをエージェンシーナースと呼んでいる。

このエージェンシーナースを派遣してもらうと、凄くお金がかかる。
だから、うちの職場ではエージェンシーナースを使うのは最後の手段的な選択となる。

そしてこのエージェンシーナース、はっきりいって私は凄く仕事ができるひとには出会ったことがない。

わたしの職場で夜勤スタッフの有休のカバーのためにエージェンシーーナースを使わざるを得ないことがあった。

このエージェンシーナースたち、なんと1週間以内に誤薬を5件以上おこってしまった。(同じ人だけではないらしいが・・・)

これでは患者さんの安全も確保できないし、ケアの質の問題もあり、エージェンシーナースは投薬行為をさせないことにした。
その場合、もう一人の常勤の看護師がすべての患者の投薬をすることになっていた。

ある日、私は夜勤スタッフが有休をとりたいというので、変わりに夜勤をしていた。
そして、エージェンシーナースと働いていた。
そのエージェンシーナース、投薬行為ができないことにものすごく腹を立て、私を無視しようとするので
「これはわたしの判断ではない。私だってあなたに投薬してもらったらどんなに仕事が楽になるか。納得いかないのならマネージャーに電話してくれ」と言ったくらいだ。

そのエージェンシーナース、うちのマネージャーに文句を言うのは気が引けるのか、そこで引き下がった。



そして、わたしの休憩中、彼女の担当患者さんが痛みがあるので、鎮痛剤を投薬してくれとやってきた。

処置室にいくと、すでに患者さんの投薬チャートと麻薬の記録簿が準備してあって、ページも開いてあった。
(イギリスのホスピスには病棟に麻薬庫があり、病棟で使う麻薬がすべてそこに入っている。そこから投薬チャートの指示通りの麻薬を取り出し、記録簿に患者名、使用量、残量を記入。これらの作業は看護師2人でチェックし、患者に投与している。)

”Oxynorm 5-10mg X6”(Oxynormを5-10mg 6回まで24時間以内に投与してよいという指示)
があった。

しかし彼女が開いていたページはOxycontin MR。

簡単に説明するとOxynormとOxycontionはどちらもOxycodonという麻薬だがOxynormは即効性があり、患者さんが痛みがあるときにすぐ使うもの。
Oxycontin MRはゆっくり作用するタイプで、12時間おきに定期的に服用するもの。

「これは違う薬だよ。今はOxynormを使うべき。OxycontinとOxynormの違い知ってる?」
とさらりと聞いてみた。

「知ってる」とあっさり言われたので、単なる勘違いかもしれないし、あまりくどくど言ってまた彼女が機嫌悪くなるといけないし、と思って問い詰めたりはしなかった。




そして数日後。
そのエージェンシーナースとわたしの同僚との誤薬が発覚。
Oxynormを使うべきところで、二人はOxycontinを使ってしまったのだ。
幸い、定期で飲んでいるOxycontinの次の内服時間も数時間後で、患者さんに害は無かった。

麻薬類は二人でチェックしないと使ってはいけないので、二つの薬を混同してしまったわたしの同僚にもミスはあるのだが。
あのとき、私がもっと問い詰めておくべきだったか・・・と悔やまれた。


しかし・・・。

エージェンシーナースだって子供ではない。
看護師である。
あのときわからなかったのであれば、ちゃんと聞いて欲しかった。



ふと思い出した「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」

看護においてわからないことを聞くのは恥ではないのだが・・・。
わからないことを聞かないというのは、自分が知らないことを学ぶチャンス、新しい知識をえるチャンスを失うことになる。

看護では「聞くは学びのチャンス、聞かぬは一生の恥」とでもいえるんじゃないかな。

私はわからないことをわからないから教えてほしいといえる看護師でありたいと思う。




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