日本とイギリスのホスピスの違いは何かと聞かれたら、一番大きな違いは患者さんのホスピスの滞在日数の長さだと思う。
1ヶ月以上ホスピスに滞在する患者さんはあまりいないので、2週間ホリデーを取って仕事に復帰してみたら患者さんが入れ替わっていて、知らない患者さんばかりということもよくある。

イギリスのホスピス・緩和ケア病棟のほとんどが在院日数を2週間をめどにしている。
(亡くなる間際の2週間だけ、という意味ではないので誤解の無いように・・・。)
患者さんの状態が悪くなったり、症状がうまくコントロールできていなければ、即入院となる。ベットの空き具合、ベット待ちの患者さんたちの状態にあわせ、週末をのぞく毎日看護師と医師でミーティングをして入院を決めていく。
緊急の依頼の場合で空きベットがあれば、日勤帯で即日入院も受け入れている。

ホスピスはあくまで緩和ケアのためのユニットであって、長期療養型ユニットではない。
2週間を目標に症状コントロール、退院後の在宅ケアの設定または長期療養型のユニット(Nursing Home)などへの転院の手続きをするのだ。
しかし、患者さんの状態は日々変わるし、Nursing Homeのベットの空き状況により、入院が長引くことはよくあること。
もちろん、退院しても状態が悪くなったら再入院となる。

過去の記事も参考にどうぞ・・・
ホスピスの滞在期間
ホスピスのベットは誰のもの


ホスピスに5ヶ月以上滞在している患者さん(メリー:仮名)がいる
状態も安定しているので、メリーは家に帰りたがっていた。
しかし、家族は家では看れないという。
メリーの家には娘夫婦が住んでおり、退院してもメリーの居場所は無いという。(この家はマリーの持ち家であり、娘夫婦の家ではない)

それではNursing Homeへ転院方向だが、家族はNursing Homeの費用は出せないと言い張る。
ホスピスに滞在している限り、マリーのケアにかかるすべての費用は無料なのだ。

イギリスでは医師により余命12週間と診断され、そして審査を通ると在宅ケアやNursing Homeの入院費のための特別な費用が支給される。(通称12 Weeks Funding)
メリーのために何度かこの12 Weeks Fundingを申請したが、状態が落ち着いているために余命12週という診断を受け入れてもらえず、Fundingを取得できないでいた。

家にも帰れない、Nursing Homeにもいけない、家族やソーシャルサービスと何度もミーティングをするが、話は平行線。

すでにマリーが入院してからかかった費用は日本円にして1千万円を軽く越えてしまった。
ホスピスにとっては大打撃でもあり、この間にホスピスのベットを待ちながら死を迎えてしまった患者さんたちもいる。

挙句に家族は
「マリーをホスピスから転院させて、状態が悪くなって死ぬようなことがあったら裁判に持ち込んでやる」
と脅迫めいた事を言い出す始末・・・。
(もちろん家族は、マリーの病気は悪性疾患なので近い将来状態が悪化し死を迎えるのは避けられないことだと知っている。)

マリー本人は自分の家に帰りたいとの自分の希望もかなえられず、ホスピスが長期療養型のユニットではないことも知っているので、自分の行き場所が無いことを悲しそうに話すこともある。

ホスピスも行き場の無いマリーを追い出すことはしない。
この先何ヶ月もマリーはホスピスにいるだろう。