日本にあるホスピスや緩和ケア病棟の多くが大きな病院のなかにあったり併設されているのに対して、イギリスにあるホスピスの多くは病院に併設されておらず、独立した建物のものが多い。
そしてホスピスの中でも国のヘルスサービスで運営されているものとチャリティ団体によって運営されているものがある。

チャリティ運営のホスピスだろうが、国のヘルスサービスの運営のホスピスだろうが近辺の病院と連携をしており、CTやレントゲンなどの検査や緩和目的の化学療法や放射線療法では患者さんを病院に転送したりする。

ビル(仮名)はある脳腫瘍の患者さんだった。
病院での放射線療法が終わり、ホスピスへリハビリテーション目的で入院してきた。
ところが腫瘍が増大しているのか、激しい頭痛を訴えるようになり、指示動作もできなくなり、明らかに病状は悪化してきていると思われた。

彼は数ヶ月先にMRIの検査予約があったが、それまで待つこともできないのではというホスピスの医師と病院の腫瘍科の専門医が話し合い、緊急でCT検査をすることになった。

しかし、CT検査へいく数日前から頭痛はさらに悪化し、頭を横に向けるだけでも頭痛を誘発しつらそうだった。ベットからおきれない日が続いた。
薬の内服も困難になってきたので、シリンジドライバーで持続皮下注射にて痛み止めや吐き気止め、鎮静剤などの投与も開始した。

このような状況でCT検査ができるのだろうか、果たして検査をしたところでさらに治療する手段はあるのか?もうその治療適応では無いのでは?という意見がスタッフからもでた。

そしてビルはCT検査の前日、身体を横に向けた際、痙攣発作を起し短時間だが意識消失。

この状態で病院までの道のり1時間を救急車でいくとはいえ、かなりのリスクに思えた。移動やCTの検査中に何かあった場合、どうなるのか。

ホスピスの医師の中でもCTに行くべき、止めるべきで意見は真っ二つに割れた。
「手術ができるとしたらこれが最後のチャンスになるかもしれない。ぜひCTを受けるべき」という医師。

「ここ数日の状態の悪化を見ても、手術は困難にちかい。危険を冒してまで病院に行く必要はあるのか。患者の状態は移送にたえられるのか?」という医師。

最終的には病院の腫瘍科の専門医が
「CTをみて、まだ手術できるチャンスがあるかもしれない」というので結局CTに行くことになったが、病院にそのまま転院という形をとってもらうことにした。

Medical Admission Unitという病棟へベットを確保してもらい、そして移送には救急隊員(薬剤の投与ができる)に付き添ってもらうことになった。


あーだ、こーだといろいろあったが、サポート体制は整ったのでビルを病院へ送り出した。




しかし、その約5時間後。
ビルは救急車で帰ってきた。
病院からの連絡は一切無し。
なんの前触れも無く、救急車で病院から送り返されてきたのだった。

「CT上腫瘍の増大が著しく、これ以上の治療は困難」とビルの家族は腫瘍科の医師からいわれたそうだ。

しかもあれほど手を回しておいたのにMedical Admission Unitにはベットは用意されておらず、ビルはずっとストレッチャーに乗せられたままだったそう。

さらに、Medical Admission Unitでは痛み止めの薬も投与されず、医師の診察のために待たされていたという。

帰ってきたビルはかなり調子が悪そうで、痛み止めと鎮静のための注射の投与が必要だった。



ホスピスが院内または病院に併設された形であれば、このようなケースではもっとスムーズにことは運ぶだろうと思う。
患者の検査室へいく移送時間も短くてすむし、病棟看護師も付き添えるだろう。検査の時間になったら行けばいいので検査室で待たされることも無い。

ホスピスには検査をするような設備が無いからレントゲンの検査ですら、病院へ移送が必要なのだ。
まあ、こういった検査が必要になる患者さんもそんなにたくさんいるわけでもないのだけど

今回のケースではベットがちゃんと用意されていなかったことや連絡も無く患者さんが帰ってきてしまったりと病院との連携も悪かったのだが・・・。



もちろん、独立型ホスピスのよさもたくさんある。
次の記事はそれについて書くかも・・・・?(予定は未定)