私が日本で働いているとき、有休の完全消化なんて夢のまた夢だった。
確か夏休みとして有休5日をとるよう組合のほうからお達しがあって、5日は取れたけどそれ以上は取った記憶が無い。
日本で4年間働いて捨てた有休はかなりの日数になるはず・・・。

ところが、ここイギリスでは有休はすべて消化するもの、捨てるなんてありえない。
私の今の職場4月から翌年3月を1年としてその間にその年度の有休をすべてとらなければいけない。

何かあったときのために有休を1週間ぐらい3月まで残しておく慎重派のスタッフが結構いる。
3月になると、結局とっておいた念のための有休を使わなかったスタッフがみんなして有休をとるので、病棟は恐ろしい人手不足になる。

マネージャーやシニアシスターが
「有休は計画的にとるように」
「2人以上のスタッフが同時に有休を取らないように」
といつもいつもいっているのだが・・・。

先週は1週間有休をとった看護師が3人、その週ずっと病欠だったスタッフが2人。
残されたスタッフはかなりの負担を強いられた。
Bank Staffと呼ばれる臨時職員やエージェンシーの派遣スタッフを使うにも限界があり、Bank staffやエージェンシースタッフはチャージナースができない。
スタッフみんなオーバータイムをせざるを得ない状況だった。

そういうときに限って入退院が激しくなる。
ベットの稼働率をある程度維持していないと政府からの補助が下りないということもあって、人手不足に関係なくどんどん入院を受け入れる。
病棟スタッフはさすがに疲労のピークに達していたのでベットの一時クローズ(入院数を制限する)ことを願い出たけど、あっさり却下。
ぶーぶー文句言いつつも、みんながんばっていた。


そんなある朝。
出勤すると、私のほかに看護師がもう一人しかいなかった。
「あれ?ほかの人は?」と聞くと
「私たちだけよ」との返事。
患者数は8人。半数がターミナルケアの患者さんだ。

冗談か、聞き間違いとおもってもう一度聞いてみたがやっぱり私たちだけだそうだ・・・。9時になったらエージェンシーが来ることになっていたけど。

とんでもない忙しさに、ばたばたしながら仕事をする羽目になり、それでも患者さんの前では落ち着いてケアするようにしていたけど。
トリートメントルームでシリンジドライバーの薬の準備中(麻薬を扱っている最中だった)のに、
(注:投薬ミスを防ぐため特に麻薬取り扱い中のスタッフには話しかけたりすることは極力避けなければならない)

「あのー、OOさんのことなんだけどさー・・・」
と医師が話しかけてきた。

振り返った私を見て、
「あ、ごめん、忙しそうだね。あとにするよ・・・・」とすごすごと退散していった。



あとで、この医師に何の用事だったか聞きにいったら

「Hiってば、思いっきりファイティングポーズでこわかったよ~」
といって笑われた・・・。


たしかに、患者さんの前でもなく、忙しくてばたばたしていた時、麻薬取り扱い中で注射器握り締めていた私はさぞかしこわかっただろう。。。

患者さんにはモナリザのような微笑(?)を向けるけど、スタッフ相手には地が出てしまったようで・・・。

忙しい中でもにこやかに冗談言いながら、仕事もきちんとでき、周りのスタッフへも気配りができるスタッフがいる。
まだまだ修行が足りないけど、私も彼女のように仕事できるようになりたいと思う。