英国ホスピスコラム


イギリスの病院でマクミラン緩和ケア専門看護師
(Macmillan Palliative Care Clinical Nurse Specialist)として働くナースのブログ

2009年08月

Community Nurseになります

NHSの病院付属の緩和ケア病棟へ転職したのは去年の10月のこと。
同じ建物内に教育センターもあり、マクミランナースのオフィスもあり、規模的にも前働いていたチャリティ運営のホスピスよりも大きなところだ。
たくさんの希望を持ってここへやってきた。

働き始めの頃はスタッフ不足やマネージメントの問題があり、病棟の状況は最悪で、私もかなりストレスを感じていた。

数ヶ月前に新しい病棟マネージャーがやってきて、病棟の雰囲気はいい方向へ向かいだした。

やはりNHSの病院付属の緩和ケア病棟となると、前の記事にも書いたけれど、かなり病院の都合に振り回される。
いつでもばたばたと忙しい感じがする。

しかし、独立型のチャリティのホスピスよりもオンコロジー(腫瘍科)病棟や在宅との連携がよく、緩和ケア病棟内ではできないような治療はわりと速やかに行えたり、在宅への移行も早い。
また緩和ケア病棟に関わる職種も多く、患者さんの亡くなった後の家族のフォローアップも専門のチームが行っている。
また病棟内やデイケアで活動するボランティアの数も多く患者さんの支えにもなっている。

総合的にみて、NHSの緩和ケア病棟もスタッフさえいれば悪くないのかもしれない。
ここでの経験も無駄ではなかったと思えるようになっていた。


実はここ最近私は何度かマクミランナースのポジションに応募していた。
面接にも呼ばれたのだけど、なかなかいい返事はもらえない。
面接のフィードバックとして毎回言われるのが
「緩和ケアの病棟の経験は十分だし、知識もある。でもマクミランナースとして働くには在宅の経験があったほうがい。」

緩和ケアから離れるのは寂しい気もするし、いろいろ悩んだ末・・・
このまま緩和ケア病棟でスタッフナースとして働き続けるよりも、在宅の経験を得る方が将来のためにプラスになるのではないかと思い、転職することにしました。
9月から訪問看護師(Community NurseまたはDistrict Nurseとも言う)をします!

これからは在宅で慢性疾患や老人看護、そして緩和ケアをやっていくことになります。



実は新しい仕事は週30時間(週4日勤務)のパートタイムしか取れなかったので、今の職場に辞表を出し、もし可能であれば臨時職員として働けないか聞いてみたところ・・・
病棟マネージャーから週7.5時間(週1日勤務)の契約でこのまま緩和ケア病棟で働き続けてはどうかとオファーをもらった。おまけに、働く日は訪問看護師の仕事の方を優先して、わたしの希望日に仕事をいれてくれるという。


・・・ということで。
来月からは週に4日訪問看護師、週に1日緩和ケア病棟で働くことになりました。
訪問看護師の担当エリアは前の職場のすぐ近く。患者さんを送ることにもなるので、前の職場ともかかわりが持てて嬉しい♪

これからはホスピスや病棟の様子だけでなく、イギリスの在宅緩和ケアの様子も紹介していこうと思いますので(仕事に慣れてきたらだけど)、今後ともよろしくお願いします。



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お知らせ:Open Day at Helen & Douglas House

9月12日土曜日に、Oxfordにある子供のためのホスピス、Helen & Douglas HouseでOpen Dayがあります。

ライブミュージックなどのエンターテイメント、出店など、ホスピス運営のためのチャリティイベントです。
ご家族でも楽しめるイベントだと思います。

興味のある方はHelen & Douglas HouseのウエブサイトからEmailまたは電話でイベント参加のための無料チケットを入手してくださいね。





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最後の言葉

まだ若い患者さんだった。
サム(仮名)は去年癌を発症し手術や化学療法をしたが、癌の進行は止まらず、積極的治療ができない状態となり緩和ケア病棟へ来ていた。

サムには何年もともに過ごしたパートナーがいた。
お互いを尊重しあい、支えあい、素敵なカップルだった。

サムはどんどん状態が悪くなり、意識レベルも低下していった。
一日のほとんどを眠って過ごすことが1週間近く続いた。
いつ亡くなってもおかしくないと思われていた。

「こんなにがんばったし。もう逝ってもいいよ、って思うんだけどね。」と悲しそうな笑顔でサムのパートナーは言った。

そんな中、サムのパートナーの誕生日を5日後に控えていた。
スタッフの中には「サムはきっと彼女の誕生日をまっているんだよ」といっていた。
でもサムのパートナーは「わたしの誕生日なんて待たなくていい。サムにはもう苦しんで欲しくない」と言っていた。


サムのパートナーの誕生日、病棟スタッフはバースディーケーキを用意した。
サムの両親、友達もやってきてみんなでお祝いした。

そして・・・・
何日も眠り続けていたサムが目を覚ました。
その日がパートナーの誕生日だと知ると
「Happy Birthday. I love you.」と言った。

スタッフ誰もが、サムが目を覚ましたことに驚いた。
他にも二言三言、会話をしたいたが、意識は朦朧としているようで、再び眠っていった。

その2日後、サムは息を引き取った。


サムはいつも礼儀正しくて、優しい人だった。
自分がつらいときでもなり続けるナースコールを聞いて
「僕はもう大丈夫だから。忙しいでしょ、行っていいよ。」と言ってくれるような人だった。

きっとパートナーに最後に伝えたかったことを言うために目を覚ましたのかな、と思った。
いつもパートナーを残して逝かなければならないことを気に病んでいたから・・・。



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戦争を忘れないために

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今から64年前の8月15日。
天皇が戦争が終結したことを国民に告げた。

多くの都市が空襲を受け、広島と長崎に原子爆弾が投下され、多くの人々の命を奪った。
今も原子爆弾の放射線の後遺症に苦しめられている人がたくさんいる。
そして戦争で旧日本軍が他の国々に与えた苦痛は今もしこりとなって残っている。

もう二度とこのようなことがおこらないように。
このような悲惨な過去を忘れないために。

そして一人でも多くの方が平和について関心を深めてくれますように。


60周年のときはイギリスでも広島の原爆死没者慰霊式・平和祈念式や長崎の原爆死没者慰霊平和祈念式典の様子がTVのニュースでも取り上げられていた。
BBCのニュースしか見ていなかったけど、今年の8月6日のニュースでは広島のことはほとんど取り上げられていなくてがっかりした。

でも、イギリスのロンドンから西へ列車で30分ほどのところにあるレディング(Reading)で、8月に広島と長崎に原子爆弾が投下されたことをうけて、バークシャーにある核施設までデモ行進をしたグループのことが小さいけどニュースになっていました。
Peace demo walk to nuclear site (BBC News)




毎年8月は平和への思いを込めてこのブログで記事にしてます。
過去の記事も時間がある方はどうぞ。

平和への思い

旧日本軍捕虜の患者さんとの出会い

平和について思うこと


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NHSに振り回される緩和ケア病棟

今のわたしの職場はとあるNHS(National Health Service)の病院に付属している緩和ケア病棟。

以前からNHSの病院の都合に振り回されている病棟だとは思っていたけど・・・。
ここ数日は状況はさらに悪化。

おととい、私はレイトシフト(午後1時半から9時半まで)だった。
ステントがつまり腎不全をおこしている患者さんがいた。泌尿器科専門医も診察に来ていて、ステントを交換するかネフロストミーを入れるかの手術をしなければこのままでは死に至るが、手術をすれば症状が改善しQOLも改善されるかもしれないとのことで、患者さんは手術をうける希望をした。

手術を受けるからには、専門である泌尿器科病棟へ一時的に転棟することになるのだが・・・。
なんと泌尿器科病棟ベットが満床。
手術は一刻を争うとのことで、緩和ケア病棟から手術室へ患者を出し、受け取ることになった。
緩和ケア病棟からオペ前後看護ということで、スタッフみんなパニック!
みんな外科なんてほとんどやったことがないか、経験があっても何十年も前の話だから。

そして、この患者さんの担当は私だった。
私も外科の経験はイギリスに来て看護師免許取得のためのトレーニング時代とそのあとスタッフナースとしてすこし働いたくらい。
不安半分、久々の外科看護だったのでちょっとわくわく気分だった。

術前チェックリストの書類すらもたず、患者さんを手術室に連れて行った私に優しく教えてくれて、チェックリストの記入を手伝ってくれた。
また術後のリカバリールームの看護師さんにも「私も含めて病棟のみんなは外科はほとんど経験してないから、この後どうしたらいいの?!」と質問攻めにした私に嫌な顔せず、いろいろ教えてくれた。

そんな優しい麻酔室、手術室やリカバリールームのスタッフのおかげで、のりきれた。
よかった・・・。
でも、手術室へ患者を送ったり、迎えにいったりで私が病棟を空けていた時間が長かったので、(緩和ケア病棟は手術とは無縁の病棟なので、手術室から一番遠い位置にある)そのしわ寄せは他のスタッフを直撃。みんな疲れていた・・・。
そして私は2時間の残業!!



そして昨日。
またまたレイトシフトだった私。
出勤すると病棟マネージャーから
「オンコロジー(腫瘍科)病棟で人がめちゃくちゃ足りないらしくって・・・。凄く申し訳ないけどオンコロジー病棟で働いてくれない?」
と言われた。

この日、病院中が深刻なスタッフ不足だったらしい。その原因はホリデーシーズンで有休をとっているスタッフが多いのと、病欠続出。
子供が夏休みに入っているので臨時職員もつかまりにくいためらしい。

私はオンコロジー病棟へは一度もいったことがなかった。
はっきりいって、手伝いに行ったのか邪魔しに行ったのかよくわからなかった・・・。
だって、部屋の位置もわからなければ、物品もどこにあるのかわからない。
医療記録や配薬チャートも自分の病棟とは違う。
1つの行動をするために、誰かに聞かなければ動けなかった。

(私、いないほうがましなのでは????)と思えるほど、何をするにも誰かに物の位置を聞かなければならなかった。

緩和ケアチームのCNS達がオンコロジー病棟にいる私を見て
「こんなことろで何やってるの?!転職したの?!」と聞いてきたので
「人手不足で、さらわれて来ました・・・(笑)」といっておいた。

またわたしの働く緩和ケア病棟はユニフォームがなくみんな私服で働いている。でもオンコロジー病棟のナースたちはユニフォームを着ているので、私服にIDぶら下げて働いている私に患者さんたちも興味津々。医師に間違われたことも。

すっかりお邪魔ムシかとおもわれた私だったけど、ある患者さんのケアをして家族とお話してた時に、実は私は普段は緩和ケア病棟で働いているといったら
「だからあなたはこういうケアがきちんとできているのね!」と笑顔でいってくれたのですこし救われた。


そして、この日、私がオンコロジー病棟へ応援に行かされたために、緩和ケア病棟ではとんでもなく忙しくなってしまったそうで、皆さんとってもお疲れのご様子でした・・・。
私を応援に出した意味はあったのだろうか???



やっぱり、NHSの病院の中にある緩和ケア病棟は、病院の都合に振り回されっぱなしだ・・・・。


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