英国ホスピスコラム


イギリスの病院でマクミラン緩和ケア専門看護師
(Macmillan Palliative Care Clinical Nurse Specialist)として働くナースのブログ

2009年07月

英国の新型インフルエンザ事情

日本が新型インフルエンザで大騒ぎの頃、ここイギリスでは感染者はいたものの、あまり大騒ぎにはなっていなかった。

手洗いをするように、くしゃみをするときは手でおおう、使ったティッシュは捨てる(ティッシュを再利用する人が多いから・・・)などの予防策は言われていたものの、感染が疑われたら家での療養を勧めていた。
日本で売り切れになるほどだったマスクについてはたいした効果が無いような言われ方もしていた。

しかし・・・

イギリスでの新型インフルエンザの感染者数はどんどんふえて約10万人以上が感染しているのではないかとも言われている。新型インフルエンザによる死者は30人。
ニュースでも連日新型インフルエンザ関連のニュースが報道されている。

そして、7月23日増え続ける感染者に対応するため、イングランド(スコットランド・北アイルランド・ウェールズはのぞく)在住者に対して、新たな対策National Pandemic Flu Serviceが発表された。

システムとしては新型インフルエンザを疑うう症状がある人は自宅待機。
GP(かかりつけ医)に連絡するのではなく、専用電話に電話するかNational Pandemic Flu Serviceのウエブサイト(www.direct.gov.uk/pandemicflu)へアクセスし、症状チェックを行う。

ただし、妊娠中の女性や慢性疾患など持病がある人、1歳以下の子供、症状が急激に悪化した人、または発症から7日(子供は5日)経過しても症状に改善が見られない場合はGP(かかりつけ医)に連絡することになっている。

この電話またはインターネットの症状チェックで新型インフルエンザであると判定された場合、抗インフルエンザ薬の受け取りのための番号が発行される。
家族または友人がその番号を持って、近くの薬局などの受け取り所へ行き薬を受け取るというシステム。
つまり、医師による診察無しで抗インフルエンザ薬が入手できる。
そのために、このシステムが悪用されるのではという懸念はあるものの、激増する感染者に対応するため、やむをえないようだ。

このシステムが本格的に開始された初日には5500人以上の人が新型インフルエンザだと判定されて抗インフルエンザ薬が処方されたらしい。

はたして、このシステムが功を奏するのか・・・。
それとも悪用されるまたは不都合が生じてストップするのか・・・。
注目したいと思います。


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外国人看護師・介護福祉士

日本滞在中、新聞で外国人看護師・介護福祉士の受け入れの賛否を尋ねるアンケート結果を見た。
「賛成過半数」という見出しだったが、Noと答えている人も42%。
そして、外国人からケアされることに不安があると答えているのが56%。

また、この新聞の記事のアンケートの中に「本で最期を迎えるときに見守ってくれる人が外国人でいいのだろうか」という意見がかかれていて、なんだか複雑な気分だった。

【私も言いたい】外国人の介護福祉士・看護師 賛成過半数



日本人である私はイギリスでは”外国人の看護師”になる。
イギリスは日本と同じ島国だけど、過去に多くの植民地を持っていたこともあり、イギリスに住む外国人は日本に比べてはるかに多い。
そして、医療現場で働く外国人の割合もかなり高い。
特にNursing Homeなどの長期療養型の老人看護の施設などはスタッフのほとんどが外国人なんてことも珍しくない。
病院でも外国人がいない職場はまず無いのでは?
わたしの職場はイギリス人スタッフが多いものの、外国人は私を含め、5人いる。

今まで看護師として私は3箇所で働いたことがある。
患者さんに外国人だからあきらかに拒否されたことは無いが、私がまだイギリスで看護師になりたてで、英語もまだスムーズに話せなかった頃、嫌そうな態度をとられたことはある。
まあ、あの頃は英語がかなり怪しかったので、無理もないと思う。


私は緩和ケアで働く中で、最期を看取る機会はたくさんある。
でも「外国人のあなたに看取られたくない」と患者さんや家族に言われたことはない。

しかし、日本の医療関係者から
「外国人なのに、イギリス人の終末期のケアってちゃんとできるの?」
といわれたことが何度かある。
文化や習慣の違いからそう思えるのも仕方ないのかもしれない。
死生観だって違う。

でも人それぞれ考えが違うように、その人にあった看護というものをしていくことができるのであれば、問題ないのではと思う。

外国人が多いお国柄のおかげで受け入れられているのもあると思うが、コミュニュケーション能力に問題が無く、ちゃんとした看護技術と知識があれば、外国人だろうが、イギリス人だろうが患者さんや家族は受け入れてくれていると私は感じている。

イギリスの場合、外国人医療者を受け入れなければ、医療サービスがまわっていかないような状況になっているというのもあるからかもしれないけど・・・。

外国人として働いている身としては、たんに「外国人」という理由だけで毛嫌いされるのはちょっと悲しい・・・と思ったのでした。



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日本に帰って思ったこと。

イギリスに住みまもなく9年。
日本に帰ると、イギリスでの生活でなんとなく身についてしまったことがあることに気づく。

イギリスでは知らない人でも偶然にでも目と目があうと微笑みあったりすることがよくある。
私が住んでいるところが特に田舎だからかもしれないけど。
周りからそれをされているうちに、私も誰かと目があったりしたときはにっこり微笑むようになった。

でも、日本に帰ってそれをやってしまうと、凄く変な目でみられてしまったことがある。
日本では知らない人と目と目があったらすぐにそらす、というのがいいのだろうか・・・・。



またトイレに入って気づくこと。
イギリスでは排尿するときの音を消すために水を流したりだとか誰もしないし、音姫なんてものはない。
私も音を気にせずするようになっていた・・・。

だから日本で外でトイレに行くときは「音姫」は忘れないようにとくに気をつけないとわすれてしまう。


そんなくだらないことが、ついつい気になっちゃう日本滞在。




今回の滞在でちょっとショックなことがあった。
私が電車に乗っていたときのこと。
車内は座席は埋まっていて立っている人も数人いた。
なんとなく、車内を眺めていたら、すこし離れたところで若い女の子が突然座り込んだように見えた。
でもそのまわりの人たちは何事も無いかのように立っていたので、
(あの女の子は座ってカバンに何か詰めているのか、靴の紐でもなおしているのかな)なんてぼんやり考えていた。

数分後、その女の子は立ち上がり、こちらに向かって歩いてきた。
そして、私の立っていたドアとは反対側のドアにもたれかかって倒れてしまった。やっぱりさっきも気分が悪くて座り込んでいたのだ・・・。

思わず駆け寄って「大丈夫?」と声をかけると「はい」返事をしてくれた。
でも顔色も悪くて、床に座り込んでしまっている。

驚いたことに、周りの人はこの出来事がまったく視界に入っていないかのよう。だれもこちらを見ないし、座っている人も誰も席を譲ってくれなかった。

駅員さんを呼ぶかと聞くと、その女の子は「大丈夫です。ありがとうございました」といって立ち上がり、次の駅でおりた。

どうして車内の人たちはあんなに無反応だったのか、私には解らなかった・・・。
友達にこの話をしたら、彼女も似たような体験があったそうで「最近、そんなもんだよ・・・」といっていた。

今回私が遭遇した電車内での出来事はたまたまだれも声をかけなかったか、私が声をかけたから他の人は声をかけなかったと思いたいけど・・・。
なんだか悲しくなってしまった。




実は15年近く前、私は満員電車に乗っていたときに、車内で倒れたことがある。
その日は短大の受験の日で、めったに乗らない満員電車だった。
眩暈がして、座り込んだところ、すぐに2人の女性が席を譲ってくれた。
しかし、吐き気が強くなり、このままでははいてしまうかもしれないと思い、次の停車駅でおりた。
すると、その駅で降りたOL風の女性が声をかけてベンチに座らせてくれた。
「大丈夫?朝ごはん食べた?これ食べて」といって彼女が持っていたキャラメルをいくつかくれた。
そして、眩暈が強くなりベンチに横たわりながらも「今日受験なのです」と私はいったような気がする。

他の人が駅員さんを呼んできてくれた。
事情を聞いた駅員さんはなんと次の電車の車掌さんが乗るスペースに椅子を出してくれて私を座らせて、目的の駅まで連れて行ってくれた。
こうして私は無事に受験をすることができ、本当に感謝している。



他人同士でも困っている人をみんなで支えあえるような社会であって欲しいなあ・・・と思ったのでした。



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Canada de NurseのMissyさん セミナー開催のお知らせ

このブログへリンクをさせていただいています、カナダのホスピスで働くMissyさんが日本でセミナーを開催されます!
以下、Missyさんのブログより抜粋です。
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12月、日本でセミナーを行います。ブログ左上の小さなお知らせや、HPサイトでもちょっぴり宣伝をしていたので、すでに連絡を下さった方ありがとうございました。ようやくセミナーの受付が開始されました。各会場とも定員50人なので、ご希望の方はお早く申し込んでください。

今回の焦点は一般病棟勤務の方にしてみました。ホスピス緩和ケアはホスピス緩和病棟だけのものではありません。一般病棟でもできることはたくさんあります。そのために基本に焦点をあてたセミナーの構成にしました。だからこの分野に興味をもっておられる方、病院に緩和ケアチームがなく、一般看護師が疼痛緩和や症状緩和をリードしなければならないような状況をお持ちの方、是非申し込んでみてください。

第二の焦点はチームアプローチです。これはホスピス緩和ケアに欠かせない要素です。どうやってチームとケアを働きかけていくか、どうやってチームを活性化させていくか。緩和ケアチームの有無に関係なく病棟、病院はチーム体制です。その中で看護師として何ができるのかに力を入れて行きたいと思っています。一般病棟ではなく、在宅、長期療養型、またはすでにホスピス緩和ケア病棟で働いていらっしゃる方も大歓迎です。楽しい、実践型の一日にしましょう。

私は受講型より参加型の方が実践につながると信じています。だから当日は椅子に座ってばかりいずにいろんな形で一日を進めて行こうと思っています。すでに経験がある方は持っている知識をリフレッシュさせ、初めての方は新しい知識を仕事場へ持って変えれるように勤めたいと思っています。

それから、おまけ!この申し込みページを通して過去のがん患者ケアの私の原稿が読めます。昨年発売のこの4誌はすでに完売されているので、読み逃した方ここで閲覧できますよ。
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興味のある方はぜひどうぞ♪

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近状報告

またまたご無沙汰しました。

ご存知の方も多いでしょうが、6月中旬より約3週間日本に帰ってました。
先週の土曜日にイギリスに戻ってきました。
時差ぼけと疲れから、日曜日はほぼ丸一日寝て過ごし。


日本滞在中に、日本緩和医療学会学術大会にいきました。
このブログを通して知り合った方々ともお会いできました。
夜は飲み会にも参加し、たくさんの方と知り合う機会もありました。

実は、昨年転職してからというもの、自分の中の緩和ケアに対する意欲が急降下していたのです。
だから、このブログを更新する気力もなえていたし。
イギリスで緩和ケアにかかわって、はじめて「もうやめたい」と思ったこともありました。

でも、今回学会で皆さんにお会いして、お話して、皆さんががんばっていらっしゃるのを聞いて、たくさんのエネルギーをもらった気分です。
わたしも緩和ケアが好きだ、自分はまだまだ未熟だけど、これからもがんばろうという気持ちになれました。
ありがとうございました。

また来年も行こうと思いますのでよろしくお願いします。






今回の帰国ではパートナーは一緒に来なかったので、約3週間英語はほとんど喋らず、読まず、聞かず。
そのおかげで、今日から職場に復帰したものの、英語はわかっちゃいるのに、口がスムーズに動かなかった。
午後からは調子が出てきたけど、午前中はどもってばかりでした。
在英9年にもなるのに、情けない・・・・。


去年の帰国では出かけてばかりで、あまり家にいなかったので、今回は予定をできるだけまとめていたので、最後の週は家でのんびりできた。
甥っ子や姪っ子たちとも遊ぶ時間ももてたし、家でゆっくりご飯を食べることもできた。
おかげさまで3週間で体重4キロ増。
ただいまダイエット中。


長くなってしまいましたが、日本滞在も楽しんだことだし、また仕事に勉強にがんばります。



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