英国ホスピスコラム


イギリスの病院でマクミラン緩和ケア専門看護師
(Macmillan Palliative Care Clinical Nurse Specialist)として働くナースのブログ

2008年01月

イギリス歯医者初体験

何年も前、語学留学したときに日本で歯科医をしていた人と友達になった。
彼女曰く「イギリスの歯科医療は恐ろしく遅れている。」

イギリスには国の医療制度NHSがあり、無料で医療が受けられる。(薬の処方箋代は払う必要あり)
歯科医療も昔はこのNHSにカバーされており、割安な値段で治療が受けられていた。
しかし、最近NHSの患者を扱う歯科医が激減、プライベート(全額自己負担)でしか受けられなくなってきている。

歯科医療をプライベートで受けるということは、かなり高額になることもある。
「こっちで高額な歯科医療費を払うくらいなら日本に飛行機で帰って治療を受けたほうがいいくらい」なんてうわさも聞いたことがあったので
プライベートの歯科医療=めちゃくちゃ高い!と思っていた。

イギリス人の中にはNHSとして歯科医療が受けられないのでここ数年、歯科医にかかっていない人がかなりいるのだとか。

もともと歯医者が嫌いな私。ここ5年近く歯医者にかかっていなかった・・・。


ところが、数日前の仕事中。
口の中になんだか異物が・・・。
吐き出してみたらなんと小さな歯のかけら。
あわてて舌で確かめてみたら下の2番目の奥歯が欠けているよう。
ちいさな隙間ができてしまったようだから、ほっておいたら虫歯になってしまうだろうから歯医者に行くことにした。

NHSの患者を扱っている歯医者なんて見つからないだろうと思いつつも、同じ街に住む職場の人に聞いたら隣町の歯科医にNHSの患者として最近登録できたとのこと。

翌日、早速その歯科医に電話で問い合わせ。
「もうNHSの患者は受け入れてません。」とのこと。

その後、インターネットで調べた歯科医を何軒かあたってみたけど、どこももうNHSの患者は受け入れていないという。

仕方ないので近所の歯科医にプライベートで看てもらえるか聞いたら、即日で予約を入れてくれた。
「初回診療費は21ポンドかかり、治療費は行う前にいくらかかるか説明します」とのことだった。


変な風にされたらどうしよう、高額な治療費になったらどうしようなんて不安を抱えながら診療所へ向かう。

受付に行くと名前を言う前に
「今朝電話をくれた方ですね。この質問表に答えてください」
と質問表を渡された。

質問事項は既往歴、感染症などのYes・Noのチェック。
受付に書き込んだ質問表を渡すと座って待つように言われた。

待つこと、数分。
若い男性がやってきて
「Miss(私の苗字)?」とにこやかに聞いてきた。
「歯科医のXXです」と自己紹介された。
歯科助手さんではなく、待合室まで歯科医じきじきのお迎えにちょっぴりびっくり。

椅子に座り、歯が欠けてしまったことを説明した。
「う~ん。たしかに欠けてるね。レントゲンをとって、歯の状態を見たら詰め物をすれば大丈夫だと思うよ。一時的な仮の詰め物だったら20ポンド。ちゃんとした詰め物だと60ポンドになりますが、どうします?」
問いわれた。

一時的な詰め物なんて、すぐに取れたら嫌だから、しっかりやってもらうことにした。

「では麻酔をしますね。口をあけてください。口の中が変な感じになりますけど、痛みは感じなくなりますから」といわれて口をあけていたら、ほほの内側に違和感・・・。
日本では麻酔は歯茎にされたような記憶があるけど?

そして、レントゲンをとられて、レントゲンが出来上がるまで待合室で待つように言われた。
待っている間、顔の左半分がはれぼったく感じてきた。さらに下唇や舌の半分も麻痺している感じ。

10分ほどで診察室に呼び戻された。
お決まりの歯を削るいやーな音に耐えて治療終了。
思ったよりもスムーズだった。

今回の治療費60ポンド。日本円にして約1万2千円。
日本円にするとすごく高い気がするけど
予想していたほど高くなくてほっとしたし、一回の診療ですべて終わったから気持ち的にもすごく楽だった。
(日本でちょこちょこ治療されて、何回も歯医者に行かなくては行けなかったのがすごく嫌だったので・・・)



でも、困ったことがひとつ。
麻酔が効き過ぎ!!量が多かったのか?!
治療が終わってうがいするときも口がうまく閉じれなくて、水が麻酔が効いているほうの口角からだらだら流れてしまってうがいなんてできたもんじゃなかった。

麻酔を打ってから3時間も顔の半分、下唇と舌の一部が麻痺したまま・・・。
おまけにこの間、うまく喋れなかった。

おかげで友達のうちでランチだったのにみんなと一緒に食べれなかったし、おなかぺこぺこになってしまった。




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Life in the UK Test

Work Permit(労働許可証)でイギリスで働き始めてまもなく5年。
ようやくIndefinite leave to remain(Settlement)、通称永住権が申請できるようになる。

イギリスのビザ取得に関しては、年々申請基準が厳しくなり、申請費が高くなっている。
このLife in the UK Testも以前はBritish Citizenshipの申請にのみ必要とされていたのに、現在はIndefinite leave to remain(Settlement)の申請にも必要になっている。

Life in the UK Testは簡単に言うとイギリスに関する知識テスト。
イギリスの政治、社会、医療、教育、生活に関するいろいろなことを質問される。
テストをパスするにはHome Officeの出版しているLife in the UK: A Journey to Citizenship 2007という本を熟読しなくてはならない。



テストは全部で24問、コンピューターをつかい、2~4択の質問になっている。45分以内に回答し、75%以上正解しなくてはならない。


私はLife in the UK Test - Study Guide: The Essential Study Guide for the Life in the UK Test (Study Guide) という本を買って勉強した。
この本には試験練習のプラクティステストが10載っていたし、Home officeの本よりもちょっぴり安かったから・・・。





本を買ったのは12月の中旬。
ちょっとずつ勉強していこうと思っていたけど、政治関連のページを読み進めるうちに、難しい紛らわしい内容ばかりでうんざりしてしまって、なかなか勉強は進まなかった。

これではいかんと、テストの日を予約することにした。
日にちが決まってしまえば、嫌でも勉強するだろうと思って・・・。

Life in the UK Websiteで自分の家から近いテスト会場を探す。
近くの街の図書館で行われているので、電話した。

電話ではとても丁寧にテスト、Life in the UKのWebsite、当日の持ち物について教えてくれた。
その会場では1週間ほど先まで予約は埋まっていた。
当日いるものは、パスポートや自動車運転免許証などの写真がついたID、現住所が乗っている電気やガスのビルなど、そして現金で34ポンド。

私は約2週間先に予約を入れた。

テキストブックを読みながら、だんだんイライラしてきた。
私はイギリスに住み始めて約7年半。ある程度のことは知っているが、試験問題をやってみたら、24問中17問正解。これでは合格できない・・・。

職場のイギリス人スタッフだって答えられないような質問が沢山載っているのに、なんで私がお金払ってまでテスト受けて受からないといけないの!
とくに政治に関する知識なんて、いったいどのくらいのイギリス人がきちんと答えられるか・・・。


とにかく、このテストをパスしなければ永住権が申請できないので、テストの2日前からようやく本腰を入れて(?)勉強を開始した。
とにかく政治に関するページは念入りに読んだ。

そしてテスト当日。
会場でIDチェックとお金の支払い。
係りの人がコンピューターに名前や国籍などの情報をコンピューターに入力してくれた。

テストに関する説明を受け、練習問題を各自おこなった。
この練習問題は4問くらいで、何問正解したかおしえてくれた。

いよいよ本番のテスト開始。制限時間45分。
24問、じっくりと読みながら答えていった。1回見直しをしても15分ほどでおわった。
ほかの人は10分くらいで終わらせて退席していた。

受験者全員がおわり、ロビーで待たされること10~15分。
名前を呼ばれて、試験管のところへいくとなんだか神妙な顔。
(落ちたか・・・?)と思ったら、試験管がにっこり笑って
「Congratulations!」といって合格証を渡してくれた。

とってもフレンドリーな試験官で
「何か質問ある?」と聞かれたので
「あなたはこのLife in the UK Testをやったことがありますか?」と聞いてみた。
「やったけど、結構難しかったわ。私の家族にも質問してみたけど答えられなかったし。」といっていた。

「私も職場の人たちに質問してみたけど、答えられなかった質問たくさんありましたよ!」といったら
「そうなのよ、これであなたもイギリス人よりもイギリスに関する知識があることが証明されたわね!」と笑ってくれた。

とにかく受かってよかった音符



*Life in the UK Testはいつ受けるべきなのか、試験官にきいてみたら、British CitizenshipまたはIndefinite leave to remain(Settlement)の申請の何ヶ月前からという決まりは特にないそう。でも、テストの予約に場所によっては1週間以上待たなくてはいけないこともあるし、テストの結果がHome officeのコンピューターに登録されるまで10日ほどかかるからぎりぎりにならないようにしたほうがいいとのことです。




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Referral meeting (ホスピスへのReferral ?)

今から約2年前だけど、ホスピスへのReferralという記事を書いた。
その続きというか、付け足しになるだろうか・・・。


イギリスのホスピスの多くが、患者さん家族から直接入院以来を受けておらず、在宅の場合はかかりつけ医、訪問看護師、マクミランナース(がん・緩和ケア看護専門看護師)から依頼を受け付けている。
患者さんが病院に入院されているときは、病院の緩和ケアチーム、癌専門医、緩和ケア専門医から依頼を受け付けている。

これらの依頼は毎日、ホスピスの責任者(チャージナース)が受け付ける。
私もこのホスピスで働き始めて4年以上がたち、一応中堅の看護師になったからか、最近病棟チャージナースだけでなく、このホスピスのチャージナースにもなることが増えてきた。

そのために、この依頼受付もやるようになった。

主にはコードレス電話を持ち歩き、依頼の電話があれば受付からこのコードレス電話に回される。

そして、依頼主から患者さんの病名、状態、どんなサポートが必要なのか聞き、Referral sheetに書き込んでいく。
さらに詳しい情報をFaxしてもらうようにお願いする。

即日で入院を依頼してくる場合は電話の後、医師に連絡し、入院を受け入れるかどうか話し合う。
即日の依頼を受けたがベットが無い場合はことわざるを得ず、近辺のホスピスを当たってもらうことになる。

即日で入院を必要としないときは、依頼患者のボードに名前と患者さんの現在の居場所、どんなサポート形態を要求しているのか(ターミナルケア、症状マネージメント、レスパイトケア、外来、デイケアなど)を書き込んで翌日の患者依頼ミーティング(Referral meeting)で話し合う。

また電話ではなく、Faxでも入院依頼は送られてくるので、Faxを受け取り次第、入院依頼患者のボードに記入していく。

多いときにはこの入院患者依頼のボードに10人以上の名前が並ぶ。

そして毎日朝、医師たちに病棟チャージナースから申し送りが終わると、患者依頼ミーティング(Referral meeting)が行われる。

このReferral meeting、参加者はホスピスのチャージナース、医師、緩和ケア専門医、作業療法士兼退院コーディネーター。
ホスピスのチャージナースが依頼患者のボードに書き込まれている患者さんすべての状態、要求しているサポートを医師に申し送っていく。

病棟の空床状況、患者さんの退院予定、依頼のあった患者さんたちの状態もふまえて、緩和ケアが必要な患者さんなのか、入院の必要はあるか、など優先順位を話し合う。

依頼のあった患者さんすべて、どう対応していくか、決定し、チャージナースはミーティングでの結果を依頼主または患者本人・家族へ電話連絡する。
翌日入院予定の患者さんなどは、依頼主に移送用の救急車の手配を依頼する。

こうしてReferral meetingは毎日(月曜から金曜日)行われている。








ちなみに月曜日と金曜日のホスピスのチャージナースになるのは気が進まない。患者依頼の電話が平日より比較的多い。
病棟の患者さんも看る傍ら、電話を受けていくのは忙しいときは困る・・・。そして私の英語のスペルはめちゃくちゃ。
電話でメモを取るとき、単語のスペルが思い浮かばないときがよくあるので、カタカナでメモしたりする。だからあとでスペルを調べて依頼フォームを書き直すこともしょっちゅう。

忙しかったときに「膵臓」のスペルが思い浮かばなかったので、依頼フォームの患者さんの診断名のところに「パンクリアティック Ca」とりあえずカタカナでメモしておいた。
英語に直すのを忘れてそのままファイルに閉じてしまった・・・。しかも翌日はホスピスのチャージナースじゃなかったからReferral meetingには行かなかった。

Meetingのあとで「これって膵臓癌でしょ?わたしも日本語読めるのよ?すごい?」と医師に笑われた・・・・。
(患者さんの状態の部分を読んで病名を想像したらしい。)




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ノロウイルス大流行!

日本でも冬になると流行するノロウイルス。こちらイギリスでも現在ノロウイルスが猛威を振るっている。

ノロウイルスは英語で「norovirus」。winter vomiting diseaseとしてもしられている。

イギリス国内のNHS病院では70病棟以上がこのノロウイルスのために閉鎖され、緊急以外の手術をキャンセル。また病院への見舞い客を制限している。

ノロウイルスに感染すると、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などの症状がでる。そして嘔吐や下痢により脱水症状を起こしやすい。
一般的にはstomach flu、stomach bugといわれることもある。


NHSのアドバスは・・・
・水分を十分にとること
・腹痛、発熱などにたいしてParacetamolを飲む
・家で安静にすること
・症状が落ち着いても48時間は学校・職場への復帰をひかえること
・手洗いをしっかりすること

そして
ある専門家がTVで言っていたのだが・・・

「小児や老人、症状が重症化した場合を除いてGP(かかりつけ医)の診療所やA&E(救急外来)にはいかないように

つまり、GPの診療所や病院での2次感染拡大を心配するあまり、下痢嘔吐だけだったら家でおとなしくしていろということらしい。

注)もちろん、GPやNHSDirectでは電話での対応をしているので患者さんを無視しているわけではないです。



BBC NEWS
Many wards closed by vomiting bug
Q&A: Norovirus


皆さんも気をつけてくださいね


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Royal Marsden Hospitalで火災発生

2日午後、ロンドンにあるRoyal Marsden Hospitalで火災が発生した。
Royal Marsden Hospital日本でも癌医療に関わる方々ならご存知の方も多いはず。この病院は癌研究、治療で重要な役割を果たしている病院。

お昼過ぎに最上階あたりから出火し、病院の屋根の半分近くを焼失。2病棟といくつかの手術室も火災によりダメージをかなり受けたようす。
患者さんたちはすべて近辺の病院、教会、パブ、カフェへ避難。
火災発生時には手術も2件行われていたらしい。

冬のロンドンはとても寒く、避難誘導されている患者さんたちはみな毛布にくるまれていたが、ほとんどのスタッフは半袖ユニフォームのまま。

煙を吸い込んで病院に運ばれた人が数人いたが、あれだけの規模の火災で被害をこの程度にとどめられたのも、病院で働くスタッフの冷静、迅速な判断と行動、パニックにならずにスタッフの指示にしたがっていた患者さんたち、そして消防士の活躍のおかげではないかと思う。

一日も早く病院としての機能が復活し、患者さんたちが治療を受けられるようになることを願ってます。



BBCの動画ニュースはこちら



私の職場では火災報知機の誤報がおおい。少なくても年に3・4回はあると思う。
あまりの誤報の多さに火災報知機がなっても、スタッフみんななれてしまって
「また、いつもの誤報だろう」という甘い認識になってしまっている気がする。
気を引き締めて、火災報知機が作動したときの対応を見直さなければならないと思った。



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