英国ホスピスコラム


イギリスの病院でマクミラン緩和ケア専門看護師
(Macmillan Palliative Care Clinical Nurse Specialist)として働くナースのブログ

2007年07月

いつになったら夏になるの・・・??

イギリス在住のみなさんは毎日のニュースで浸水被害のこと、そして降り続く雨といつまでたっても夏が来ないイギリスにうんざりしている人も多いはず・・。
私もその一人。

私の住んでいる州はテムズ川が流れているので、イギリスの中でも大雨の浸水による被害が結構出ている地域。
幸い、私の住む町はテムズ川沿いではないので浸水被害は無いけれど、同じ州内にある町々は浸水しているところが多く、かなり深刻な被害が出ている。

そして私の働くホスピスも近隣のNursing Homeで浸水被害が出ているところからの患者さんを一時的に受け入れている。

また道路が冠水してしまい、仕事にこれなくなったスタッフもいた。

もう7月末だというのに、まだ長袖を着ていないと寒いし、雨は毎日降るしでいったいいつになったら夏になるんだー!と叫びたくなる・・・。

日本の暑苦しい夏が嫌いで、夏の間は帰国を避けているけど、さすがにこんな天気が続くと暑苦しくてもいいから夏らしい天気になって欲しいと思えてしまう。

各地の浸水の被害をニュースで見ていると、夏なんてどうでもいいからとにかく、早く水が引いて天気がよくなって、みんながいつもどおりの生活ができるようになることを願うばかり。


てるてる坊主でもつくろうか・・・。雨

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日本語セラピー

気がつけば、もうすぐイギリスに住み始めて7年になる。
早いような、遅いような・・・。

語学留学できたときには
「日本人同士でつるまないように。」
「イギリス人の知り合いをつくって」
なんていわれたこともあった。

とある語学学校で知り合った日本人の人には「日本人と関わると英語の勉強にならない」と避けられたこともあった。

語学留学できて、英語力を伸ばそうと思ってイギリスにいるのであれば、それも仕方ないのかもしれない。

でも最近、英語も日常会話に困らなくなり(正確には度胸がついてきたので間違った英語で話すことに戸惑いがなくなってきたというべきだ・・・)こちらで生活するようになってくると、日本人の友達ってありがたいって心から思う。

イギリスに何年すもうが私は日本人。
生まれ育った習慣や文化からは離れられない。
日本語で思いっきり話したいときもある。
イギリスの愚痴を思いっきり言いたいこともある。
日本食を一緒に楽しんで、おいしいって言い合いながら食べたい。

日本食を食べたり、日本語でおしゃべりしたり。
日本の文化や習慣を分かり合った同士とお話できること。
イギリスに長く住めばすむほど、それはすごく重要なことに思えてくる。


「日本語セラピー」とある友人は言っていた。

海外にいる私たちが、自分の生まれ育った環境に浸り、リラックスできること、それは紛れも無くセラピーなのだと思う。




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医療現場で働く外国人

イギリスの医療現場では外国人が沢山働いている。
そういう私もここイギリスでは外国人。
イギリス人100%の職場なんて無いのでは?というくらい、イギリスの医療現場はいまや、外国人無しでは成り立たない。

最近やってきたポーランド人のAuxiliary Nurse(補助看護師)は
「このホスピスはイギリス人ばかりだから緊張した・・・。」といっていた。

彼の以前の職場はNursing Homeでイギリス人スタッフは1人だけで後はみな外国人スタッフだったという。

私の働いているホスピスはイギリス人スタッフが大半を占めている。
看護スタッフのなかで外国人は日本出身の私、マレーシア出身のナースとポーランド出身の彼のみ。

彼とはどうしたら英語が話せるようになるかを話していたんだけど、彼はまだ英語に不安があるという。
私たちは母国語が英語じゃないし、どうがんばったってネイティブのように話すのは無理がある。でも、言葉が不自由な分私は労働量でカバーできると思っている、と話した。



こんなこともあった。
何ヶ月も前に、ある患者さんをNursing Homeへ転院してもらうことになり、家族がそのNursing Homeを見学に行った。
そして、ホスピスにやってきたら、なんだかご立腹。

「あんなに外国人だらけのNursing Homeなんて!言葉も通じないんじゃないか?!ケアだって大丈夫なのか?!」といわれた。

でも・・・。
そのときチャージナース(病棟責任者)だったとはいえ私自身、見た目も立派な外国人。
その私に、よくもまあ、そんな人種差別まがいのことが言えたものだと思わずわらけてしまった・・・・。(苦笑)

その後、このご家族は退院コーディネーターにいまどき外国人がいないNursing Homeなんて無い、外国人スタッフだからといってケアの質が悪いわけではないと言われてたけど。

NHSの病院で働くコンサルタント(専門医)は
「怠け者のイギリス人よりも、外国人スタッフと仕事していたほうが仕事がスムーズだ!」
と言っていた・・・。




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行き場の無い患者さん

日本とイギリスのホスピスの違いは何かと聞かれたら、一番大きな違いは患者さんのホスピスの滞在日数の長さだと思う。
1ヶ月以上ホスピスに滞在する患者さんはあまりいないので、2週間ホリデーを取って仕事に復帰してみたら患者さんが入れ替わっていて、知らない患者さんばかりということもよくある。

イギリスのホスピス・緩和ケア病棟のほとんどが在院日数を2週間をめどにしている。
(亡くなる間際の2週間だけ、という意味ではないので誤解の無いように・・・。)
患者さんの状態が悪くなったり、症状がうまくコントロールできていなければ、即入院となる。ベットの空き具合、ベット待ちの患者さんたちの状態にあわせ、週末をのぞく毎日看護師と医師でミーティングをして入院を決めていく。
緊急の依頼の場合で空きベットがあれば、日勤帯で即日入院も受け入れている。

ホスピスはあくまで緩和ケアのためのユニットであって、長期療養型ユニットではない。
2週間を目標に症状コントロール、退院後の在宅ケアの設定または長期療養型のユニット(Nursing Home)などへの転院の手続きをするのだ。
しかし、患者さんの状態は日々変わるし、Nursing Homeのベットの空き状況により、入院が長引くことはよくあること。
もちろん、退院しても状態が悪くなったら再入院となる。

過去の記事も参考にどうぞ・・・
ホスピスの滞在期間
ホスピスのベットは誰のもの


ホスピスに5ヶ月以上滞在している患者さん(メリー:仮名)がいる
状態も安定しているので、メリーは家に帰りたがっていた。
しかし、家族は家では看れないという。
メリーの家には娘夫婦が住んでおり、退院してもメリーの居場所は無いという。(この家はマリーの持ち家であり、娘夫婦の家ではない)

それではNursing Homeへ転院方向だが、家族はNursing Homeの費用は出せないと言い張る。
ホスピスに滞在している限り、マリーのケアにかかるすべての費用は無料なのだ。

イギリスでは医師により余命12週間と診断され、そして審査を通ると在宅ケアやNursing Homeの入院費のための特別な費用が支給される。(通称12 Weeks Funding)
メリーのために何度かこの12 Weeks Fundingを申請したが、状態が落ち着いているために余命12週という診断を受け入れてもらえず、Fundingを取得できないでいた。

家にも帰れない、Nursing Homeにもいけない、家族やソーシャルサービスと何度もミーティングをするが、話は平行線。

すでにマリーが入院してからかかった費用は日本円にして1千万円を軽く越えてしまった。
ホスピスにとっては大打撃でもあり、この間にホスピスのベットを待ちながら死を迎えてしまった患者さんたちもいる。

挙句に家族は
「マリーをホスピスから転院させて、状態が悪くなって死ぬようなことがあったら裁判に持ち込んでやる」
と脅迫めいた事を言い出す始末・・・。
(もちろん家族は、マリーの病気は悪性疾患なので近い将来状態が悪化し死を迎えるのは避けられないことだと知っている。)

マリー本人は自分の家に帰りたいとの自分の希望もかなえられず、ホスピスが長期療養型のユニットではないことも知っているので、自分の行き場所が無いことを悲しそうに話すこともある。

ホスピスも行き場の無いマリーを追い出すことはしない。
この先何ヶ月もマリーはホスピスにいるだろう。

ホスピスでの仕事に対するSatisfaction

「ホスピスで働くのって嫌じゃないの?死ぬ人ばかりでしょう?」
「亡くなる患者さんばかりで悲しくなってこない?」
ホスピスで働くスタッフなら一度はこのようなことをいわれたことがあるのでは・・・?

外科であれば、患者さんは手術を受け病気が治ったり、症状が改善して退院していく。肉眼的にも、検査データーなどでも結果を知ることができる。
患者さんが快方に向かい退院するという過程を通過することによってスタッフの仕事に対するSatisfaction(満足をもたらすもの)が得られるかもしれない。

なぜ私たちはホスピスで働くことを選び、やりがいを感じ、今後も働いていこうと思うのか。
ホスピスで働くスタッフにとっての仕事に対するSatisfactionってなんだろう・・・?

私は、患者さん・家族との信頼関係を築き、Quality of life(QOL)の向上を図ることではないかと思う。
単に私たち医療者側からみた、判断した患者さんのQOLでは、医療者の自己満足に終わってしまうのではないかと思う。しかし、患者さんや家族との信頼関係を築き上げる中で、患者さんにとってのQOLとはなにか、そしてそれを向上させるケアを提供できているのかを判断することもできるのではないか。
患者さんや家族にとっていいケアが提供できていなければ、信頼関係を築き上げることは不可能だと思うから・・・。

ホスピスでは治癒の見込みの無い疾患の患者さんを対象としているため、やはり死亡退院も多いのは事実。
そして、死亡退院されてそれっきり患者さんの家族とのコンタクトが途絶えてしまうこともある。あの患者さんの家族はどうしているだろうか・・・と考えることもある。私達の提供したケアをどのように思われただろうか、と思うこともある。

多くのご家族が感謝の言葉やカード、お菓子などを持参し再びホスピスを訪れてくれる。そして、お葬式がどんなだったか、家族のみんなはどうしているのかと教えてくれる。

けして感謝の言葉が聞きたいがためにこの仕事をしているわけではない。

ただ、残されたご家族から入院中だった頃の患者さんの話を聞いたり、一緒に懐かしんで患者さんの話をすることで、私たちが亡くなった患者さんに対してどんなケアを提供することができたのか、それは患者さんのQOLの向上につながっていたのかを振り返る機会にもなっているのだと思う。
もちろん、ご家族からのポジティブなフィードバックもこの仕事をやっていてよかったと思わせてくれる。

ホスピスでの仕事はけっして暗い仕事ではない。Satisfactionの得られない仕事ではない。
患者さんと家族の残された時間のため、患者さんのQOLの向上のためサポートをしていく重要な仕事だと思う。
そしてそれに関われるこの仕事はとてもやりがいがあると思うし、今後も私はこの仕事を続けて生きたいと思う。






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