英国ホスピスコラム


イギリスの病院でマクミラン緩和ケア専門看護師
(Macmillan Palliative Care Clinical Nurse Specialist)として働くナースのブログ

2006年10月

実は泣き虫な私・・・。

信じられないという人もいるかもしれないけど、実は私は泣き虫。

自分が情けなくて泣けてしまう・・・。
または悔しくて泣けてしまう・・・。

このホスピスで働き始めて3年経った。そして夜勤専門から日勤専門で働き始めて3ヶ月経った。

ここ最近、とても忙しかった。
病棟にチームリーダーはいるものの、ミーティングが多くて私はいつも病棟チャージナース(病棟責任者)として働いていた。
スタッフの人員の数的にはそれほど悪くは無かったのだけど、私の働く病棟には緩和ケア未経験者の新しいスタッフが2人、また半年以上働いているがあまり仕事になじめていないスタッフがおり、そのスタッフたちのフォローもしつつ、チャージをするという日々が続いていた。

また、数週間前にホスピスの方針で日勤帯での受け持ち看護制度の試験導入が始まった。今まではチャージナースを中心に病棟内はチームナーシング制をとっていたのだけど、病棟内を2グループに分けてそれぞれスタッフがそのグループの患者の受け持ちとしてその勤務帯をケアするというシステムが試験的に導入されたのだ。

そんなある日、私がレイトシフトで出勤するとドラックチャート(薬の指示表)に12時の配薬欄にサインのない患者さんが何人かいることに気づいた。
アーリーシフトで受け持っていた看護師に患者さんが配薬されているかどうか聞いたところ、
「私は知らない、OOさんがやったと思う」という。
そしてそのOOさんに聞けば
「私は知らない。XXさんがやったんじゃないの?」という。

結局私はその日のアーリーシフトの勤務者全員に聞いてまわる羽目になった。
そして誰も配薬していないことが分かったのだが、あるスタッフが
「そんなに重要な薬なの?一日一回のだったらHiが今あげればいいじゃない」といってきた。

たしかに、時間が遅れたけど、私があげたってかまわない。
ただ、患者さんがその薬を飲んだのか飲んでないのかが私は知りたかったのだ。(ドラックチャートにサインをし忘れる看護師がたまにいるので)

そして配薬し忘れた看護師が
「そんなんだったらHiは私を責めればいいじゃないの」といっているのを聞いてしまった。
私は患者さんのことを考え、配薬やいろいろな手配などがちゃんと行われているか確認したつもりだったのに、そんな風にいわれるなんて・・・・。
ものすごくショックだった。

私は別に責めているわけではない。
患者さんがちゃんと薬を飲んだのかどうかを知りたかっただけなのに。
たとえ一日一回の薬でも、看護師が渡し忘れた場合と看護師がサインをし忘れた場合ではその後の対応だって違う。

受け持ち看護制度を導入した後、こんなことばかりだった。
患者さんの外来予約の移送手配や、退院手続き、今までチャージナースがやっていたことを受け持ち看護師がやることになったのだが、みんなそれを忘れてしまってやっていない。そしてレイトシフトに来る看護師にそれらのやり忘れがすべて降りかかる、ということになっていた。

長期病欠のスタッフやミーティングで忙しいチームリーダーのカバーで実質的にはチームリーダーの次に私がシニアスタッフになっていた。

こういうことが度重なり、いい加減うんざりしてきた。
私は一生懸命ベストを患者さんのケアにベストを尽くしているつもりでいたけど、この状況は何なのか・・・。自分のやっていることにまったく自信がもてなくなり、情けない思いでいっぱいになり、涙が止まらなくなってしまった。

そんなメソメソ状態が何日か続き、まずいなあ~と自覚はしていたけれど吹っ切れないでいた。

シニアシスター(看護師長)にも話を聞いてもらい、ちょっと気が楽になってきた。
新しいスタッフが多く、そのサポートに力を注ぎ、チャージナースとしても働き、また受け持ち看護制度導入でまだ不安定な部分を私は自分のせいのように背負い込んでしまっているのではないかといわれた。
「Hiはとてもよくやっている、だからそんな心配するようなことは無いわよ」
そういってもらってほっとした自分に気づいた。
悪いほうへ悪いほうへと考えすぎていたのかもしれない。
私の悪い癖だ・・・。

私の大学のコースのスーパーバイサーをやってくれているスタッフも最近の私の落ち込みようが気になっていたようで、手紙や携帯にメッセージをくれた。
電話でいろいろ話すうち、やっぱりまだちょっと泣けてきてしまったけど。
話を聞いてもらえて大分、落ち着いた。

また明日から笑顔で仕事できそうな気分になってきた。
あんなにくよくよ悩んで泣いてしまう自分が情けないと思う。
いい加減、泣き虫は卒業しなくちゃね。


言葉

今やっている大学のモジュールは死、死に行くこと、死別について。

コミュニケーションについての講義が結構興味深かった。

たとえば・・・
If you have chomo, you rarely have side effect from it.
(もしも化学療法をしたら、副作用はめったに出ないでしょう)
と医師が言ったとする。

このrarelyはいったい何パーセントくらいの確立を示しているか・・・?と先生がクラスのみんなに聞いた。
ある人は5%くらいだと考え、ある人は30%くらいだと考える。ちなみに私は20%くらいだと思っていた。
実際に医療者を対象にした調査でも、1%から20%とばらつきがあり、平均は5%という結果だったそう。

またこれが日本語であっても「めったに副作用は出ない」といったときに、患者さんや家族は何パーセントくらいの確立だと考えるか?


このほかにも

Commonly

Typical

not usually

often

a small chance

not infrequently

・・・などの単語は何パーセント位の可能性を示すと思うか?ときかれた。

お暇な方はちょっと考えてみてください。









同じように医療者に行った調査では・・・

Commonly 20-90% 平均75%

Typical 50-90% 平均80%

not usually 5-40% 平均17.5%

often 30-90% 平均62.5%

a small chance 1-20% 平均8.5%

not infrequently 10-95% 平均45%

という結果が出たそう。

同じ単語なのに、そして答えた人はイギリスで働く医療者たちだけど、結果は結構ばらつきがある。

not infrequentlyなんてネガティブを2重に使っていて、私だけでなく何人かのほかのクラスメイトも低いの可能性のことだと思ってしまった。
実際はnotがinfrequently(めったにおこらないこと)を否定しているのでfrequently(しばしばおこること)と同じような言い回しになるそうな。
ネガティブを2重に使うことは間違ったグラマーになるはずと思うけど、実際の会話の中に使われることもある。

これだけ、数値にばらつきがあるということは医療者の言った内容が捉える人によって内容が間違ったものになる可能性がある。

言葉って難しい・・・。

イギリスの医療っていったい・・・。

先週末、買い物に行った。彼氏がよく行くスーツのお店にも寄った。
そのお店はある街のメインストリートにあるけど、ちょっと古ぼったいかんじの店。気さくなおじさんとおばさんが経営している。いろいろなとこからセンスのあるスーツを仕入れているので見かけとは違い、結構お客さんはくる。

私はそのおばさんのキャラクターが結構好きで
「XXさん、そのスーツすっごくにあってる!」
「買わなきゃ後悔するわよ!」
「買わないの?そんなに似合っているのに買わないなんてばかげてるわよ」
なんて冗談交じりにいったりする

おじさんはおばさんにちょっと尻に敷かれてるかも・・・という感じのカップルだった。

ところが、先週末にその店に行くとおじさんの姿が見えなかった。

「先月なくなったのよ。脳腫瘍でね。」とおばさんが言った。

おばさんの話によると、おじさんは3ヶ月ほど前から頭痛を訴えるようになったそう、そして眼球内に出血も見られることもしばしばあったそうな。
そのつど、GP(かかりつけ医)に見てもらいに行ったが
「Paracetamol(アセトアミノフェン)を飲んで様子を見るように」と言われ続けていた。

ある日、店を閉めた二人はそれぞれの家へ帰ったが、おじさんとその夜から連絡が取れなくなったそうだ。
次の日の朝、店におじさんは顔を出さず、今までそんなことは一度も無かったそうで、不安に駆られたおばさんはおじさんに何度も電話をするがつながらない。
おじさんの近所の人に電話するとおじさんの車はいつもの場所に止まっているという。

あわてておじさんの家に駆けつけたおばさん。おばさんは鍵を持っていたけど、おじさんが用心のためにかけたのか、内側のロックがかかっていてドアが開かなかった。
異常な状況に、不安を覚え、おばさんは警察へ電話した。警察は着てくれたものの、明日まで様子を見るようにといって立ち去ってしまったそう。

ドアを蹴破った近所の人とおばさんがみたものは床に倒れて、すでに冷たくなっていたおじさん・・・。
そして解剖の結果、脳腫瘍が原因だった。

おばさんはイギリスの医療にすごくおこっていた。
異常な頭痛、眼球内の出血を訴えてなんどもGPに看てもらったにもかかわらず、一度も頭部の精密検査、CTもしてもらえなかったこと。
もしもGPがきちんと対応してくれていたら何か違っていたのではないかと・・・。
昨日までいっしょにすごしてきたパートナーをあっという間になくしてしまった悲しみとGPに対する怒りでいっぱいだった・・・。

「たった一ついいことといえば、彼は苦しい治療も、病院生活も送ることなくあっという間に逝ったことくらいかしらね・・・」
とおばさんが最後に言った言葉はおばさん自身を慰めているかのようだった。

第一難関はモーゲージ。

前回の記事の続き・・・。

不動産屋のモーゲージ(住宅ローン)アドバイザーに会いに行ったら事態は急変。

ワークパーミット(イギリスの労働許可のビザ)保有者は有効期限が2年半以上ないとモーゲージを組めないといわれてしまった。

この前話したときは大丈夫なんていったくせに・・・。結局根拠の無い大丈夫だったのか?!

じつは2年ほど前にもフラット購入を考えていたことがあって、モーゲージの相談をしたらワークパーミット保有者でも大丈夫とのことで組めたんだけど、実際は物件が高すぎて手が出にくかったのと、いろいろ事情があってけっきょくやめた。今思えば、そのときはワークパーミットの有効期限が4年近く残っていた。
今回本格的に家を買うことになり、収入も上がっているし、頭金もあるのでまさかモーゲージで躓くと思ってもいなかった。

私のワークパーミットの有効期限はあと2年ほどしかなかったのだ・・・。
でもあと1年半弱で永住権の申請ができることを伝えたのだけど、モーゲージアドバイザーの答えはNO。

あきらめきれずにその後ほかの不動産屋のモーゲージアドバイザーに何件か問い合わせたが同じ返事だった。
銀行にも何件か問い合わせたけど答えはNO。

挙句にある銀行には頭金の金額を聞かれ
「そのお金はいったいどこから手に入れたんだ?」と厳しく追及される始末。
あまりの失礼な言い方に友人からは
「ドラックディーラーか売春でもして稼いだといってやればよかったのに!」
といわれた・・・。

やっぱりもうだめか、永住権取れるまで待つしかないのかとあきらめかけていた頃、ちょっと前にもらったある不動産屋のモーゲージアドバイザーの名刺が出てきて、だめもとで彼に連絡を取ってみた。

事情を説明してみると、やはり厳しいといわれた。
職業は?ときかれたので
「看護師」と答えると
「エクセレント!それなら何とかなる」といわれた。

医者や看護師などの専門職の場合、現存のワークパーミットの有効期限が多少短くてもモーゲージをくめることがあるのだとか。(もっているワークパーミットがきれたとしても更新される可能性が高いからだとか)
実際彼はワークパーミット保有者で有効期限が2年未満の人のモーゲージを組むのを手伝ったことがあるという。

そして給料明細や、P60(前年度の収入と税金の支払い状況が記載された書類)をもってそのモーゲージアドバイザーへ相談に出かけた。

いろいろ自分の個人情報を聞かれて、(いつイギリスに来たか、働きはじめたのはいつか、すんでいるところ、クレジットカードのローン、頭金の額、いくらの物件を探しているか、など)いろいろモーゲージの会社や銀行をあたってみるから明日また連絡するといわれた。

そして翌日、そのモーゲージアドバイザーから電話があり、ある銀行が私のモーゲージを組んでもいいといってくれたそう。

またたいていは基本給の4倍くらいが借りれる額になるのだけど、私の場合夜間や週末に働いた分の手当て(平日夜7時以降は時給が3割り増し、土日は6割り増し)があるので、年収は基本給より高くなっている。そのため、過去2年間のP60に記載されている年収の平均の4倍まで貸してもいいといってくれた。

いったんはモーゲージが組めないからと家の購入をあきらめかけたけど、このモーゲージアドバイザーには感謝感謝。

(追記:この後、さらに2人のモーゲージアドバイザーからワークパーミットの有効期限が短くてもモーゲージが組めるといわれ見積もってくれました。頭金がある、収入がしっかりしているのであればビザの期限にかまわずモーゲージは組もうと思えば組めるようです。)


そして、以前オファーしたフラットはまだ売れていないか聞こうと思って不動産屋Aの担当だった女の子に電話した。

「モーゲージが組めたのですが、あのフラットはもう売れちゃいました?」と聞くと、以前のフレンドリーな感じとは打って変わって
「ああ、Hiね。モーゲージ組めたってどこの会社?名前は?電話番号は?うちのモーゲージアドバイザーが調べなきゃいけないから教えてもらわないと困るわ。それにソリシター(弁護士)はどうするのよ。」
とつっけんどんでなんだかとっても失礼な感じ。

「売れてないけど、ほかの人があなたより高いオファーを出したからあの額ではムリよ。もっと高い金額を提示してくれないと。最低でもあと3000ポンドは上乗せしてくれないと」といわれた。

「だったら3000ポンド上乗せしてもいいけど。私のモーゲージの銀行の詳細は家に帰らないと分からない。今外だから30分はかかるけど」
というとだったら家に着いたらすぐ電話頂戴といわれてそのときは電話を切った。

家についてなんだか嫌な気分だったけど、私のモーゲージの銀行の詳細がはっきりと分からなかったのでモーゲージアドバイザーの彼に電話すると、彼からその不動産屋Aへ電話してくれるという。

そのことを不動産屋Aの担当の女の子へ電話をすると
「彼女はさっき帰ったけど?明日かけなおしてくれる?それともメッセージ残してくれてもいいけど」とほかの人に言われて・・・。
すぐに知らせてといったのはむこうなんだし、30分ほどでかけなおすって言っておいたのになんなんだ?

頭にきたのでもうほっておくことにした。そのフラットも実際3000ポンド上乗せしてまで払うほど価値がないかもと思えてきたし。ほかにも物件があるのであせらなくてもいいかと思って。

でもその後、私のモーゲージアドバイサーはその不動産屋Aに電話してくれて、私のモーゲージが組めたことを説明してくれていた。

そこからこの不動産屋Aの態度は急変。
ほかのスタッフから何度も電話がかかってきて「早くしないとあのフラットが売れてしまうから連絡頂戴」と何度もメッセージが・・・。

後で分かったことなのだけど、私がオファーを出したそのフラットの持ち主は2つの不動産会社を通して売ろうとしていたらしい。この不動産屋Aではなくほかの不動産屋Bのほうの客が買おうとしていたそう。だからそのままだと不動産屋Aのほうは利益にならないので、モーゲージが組めた私に買って欲しかったそうで必死だったそうな・・・。

その後も不動産屋Aからは「ほかにも物件があるから連絡頂戴」とか「新しい物件見に行きませんか」としょっちゅう連絡が来るようになった。

不快な対応をされ、私のモーゲージアドバイザーと話してモーゲージが組めたと分かったとたん態度をころっと変えたのも嫌だったので、電話に残されていたメッセージも無視しておいた。

まあ、イギリスだからこんなものかもしれない

とりあえず、モーゲージは何とかなったので再び物件探しの日々を送ることになった・・・。

人生で一番大きなお買い物

私は今までの人生の中で一番高い買い物をしようとしている。

何を買うのかというと・・・住処。家

今はホスピスの中にすんでいる。自分の部屋があって、キッチン、お風呂、トイレをもう一人のスタッフとシェアしている。
そのスタッフはここに20年以上住んでいるので、私は彼女のテリトリーに迷い込んできてしまった感じがしていた。

今までは夜勤をして7日休みになると彼氏の家に行っていたので、自分の部屋は仕事のためだけにあるようなものだった。
でも、日勤を始めて、彼氏に会いに行く時間も減ってしまったし、この部屋で過ごす時間が長くなってくるにつれ、自分の場所が欲しいなあ~と思うようになってきた。

狭い机しかないので大学の勉強を始めると部屋の中は本と資料に埋もれて恐ろしいことに・・・・。(もともと私が片づけが苦手というのもあるかも)

窓の外を見ると病棟の一部がどうしても眼に入ってしまって、なんか仕事から気持ちの切り替えができなくって、ここに住むのも苦痛だった。

フラットを借りるにしても、この国は借りるのも高い!
買ってしまってモーゲージ(住宅ローン)の返済のほうが安い場合だってある。
何より日本と違うのは中古だからといって物件の価値が下がらない。
どうせ数年はこちらで過ごすつもりでいるし、将来日本へ帰るかどうかもまだはっきりしない。

こつこつとためていた貯金があるので頭金になりそう。
ならば、買ってしまえ!と決断。

余談だけど、家購入の話を母親に電話でしたら、母親の第一声は
「あんた、結婚するんじゃなかったの?!」だった・・・。
(悪いねぇ、いつまでも独身で~♪)

早速インターネット(RIGHTMOVE.COM)で物件探しをはじめた

めぼしいエリアと相場、自分の予算なんか踏まえつつ、休みになるとそのエリアの不動産屋を数件尋ねた。
そこで見つけた2ベットルームのフラットをみにいって結構よかったので、オファーを出してみたら通ってしまって、こんなにとんとん拍子でいいのかしらなんて思ってた。

本来はモーゲージがどこからいくら借りれるかをはっきりさせてからオファーを出すべきだったのだけど、不動産屋のモーゲージアドバイザーと軽く話したときは大丈夫なようなことをいわれていたし、頭金もあるし、収入もあるからそのフラットの額くらいは大丈夫といわれていた。

でも、本格的なモーゲージの相談になった時点で事態は急変・・・・。

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