英国ホスピスコラム


イギリスの病院でマクミラン緩和ケア専門看護師
(Macmillan Palliative Care Clinical Nurse Specialist)として働くナースのブログ

2006年08月

患者さん行方不明?!

ある日、チャージナースとして働いていた。そしてほかにも看護師2人いたのでそれほどばたばたと忙しくなく、暇でもなく。ちょうどいい感じのペースで仕事ができていた。

ある患者さんが化学療法を受けるために病院へ行く予定で、前回の治療時は病院でお昼ご飯を出してもらえなかったと聞いたので今回はお弁当持参で行ってもらった。

朝の11時前に救急車が迎えに来て、歩けるし、身の回りのことができる患者さんだったので前回同様エスコートはなしで行ってもらった。

午後2時半過ぎ、病院から1本の電話が・・・。

「あのー。XX病院のXX病棟のナースですけど。患者さんそちらに戻ってきてませんか?」という。

私「今日はそちらで治療だから朝、救急車で送り出しましたけど?」

「あ、えーっと、一旦きたんだけど、返したんです。だからそっちにいるんじゃないかと思って・・・・。」とたどたどしく言われた。

わけが分からず、
「帰ってきてないです。一旦きたのに返したってどうゆうことなんですか?」と聞くと

「ちょっと早く着たから・・・。あ、携帯電話とか知ってたら教えてください」となんか、よく分からない返事。

ますますわけが分からなくなったので、
「何で返したんですか?化学療法はしないんですか?それにどうやって返したんです?患者さんは救急車で帰ってくるはずだからそちらが手配しなければここには戻ってこれないはずです。その患者さんは携帯電話は持っていないと思います。」と思わず語気が強くなってしまったら

「えーっと、あの・・・。そっか救急車ね・・・。」とあちらはしどろもどろになった挙句、病棟師長に電話をかわられた。

「実は患者さんが予約時間より早く着いたからお茶でも飲んできて1時に帰ってくるようにいったんです。でもそれっきり戻ってこなくて。もう2時半過ぎてしまって。患者さんの携帯電話番号知りませんか?」といわれた。

「患者さんはこちらには戻ってません。携帯電話も持っていないと思います。お昼ごはんも持って言っているから院内のどこかにいるのではないですか?そちらで探してもらえないのですか?」というと

「探してみます」とのことで電話が切れた。


”患者行方不明”のこの事態、すぐにホスピスの師長へ報告。
この患者さんは宗教にとても熱心な方なので自殺はありえないと思いつつも、どこかで転んだり倒れている可能性もある。

ホスピスの師長さんが病院へ電話し、現在院内捜索中とのことだった。
こちらからも自宅へ連絡したり、家族にも連絡をとった。

こちらからは連絡できるところにはすべてしたし、あとは向こうからの連絡を待つしかない、と分かっていても、すでに3時半。スタッフみんなの不安が募ってきた。

「どこにいるんだろ・・・」
「どこかで寝ちゃっているならいいけど・・・。」
「まさか転倒しちゃったりして・・・」

さまざまな憶測が飛ぶ中

「まさかチャペルにいたりして」と思いつきで言ってみたら
みんなに「そうかも!!」といわれてしまった。
(半分冗談というか、あてずっぽうで言ったんだけど・・・・)


その数分後、
「院内のチャペルで眠っていた患者を発見!」と病院からの連絡が。

その後患者さんは治療も受けて無事にホスピスに帰ってきた。よかったよかった。




私の特技。

仕事場では日本人は私だけなので、当たり前だけど日本語はまったく使う機会は無い。
このホスピスでの仕事ももうすぐ3年、英語で仕事をするのに慣れたかなあ・・・というところ。

こんな私の特技?といえば・・・
好きなときに英語をスイッチ・オフできる。
つまり聞きたくないと思ったら英語が聞こえないよう(理解しないよう)頭の中でスイッチオフできること。

最近日勤の仕事にも少しずつ慣れてきたとはいえ、チャージナースとして働くことが多いので、いつもやることがいっぱい、電話もいっぱい、あれもこれもと頭がパンクしそう。
忘れないうちに記録書いておこう、とオフィスで座って看護記録を書いている私の後ろでAuxiliary Nurseさんたちが何かおしゃべりをしていたが、雑談っぽかったので英語はスイッチオフして記録に集中していた。

数分?したところで肩をたたかれ、
「ねえ、Hi、私たちの話聞こえてなかったの?」と笑われた。

「うん、ごめん。英語聞いてなかった。なんだった?」といったら

「今勤務表見ながら、土曜日のLateシフト、ジェニーはHiっていうスタッフナースと二人だけよ~。このスタッフナースは人使い荒いからたいへんよ~。」
(と冗談を言っていたのに私がまったく反応しなかった)

「しかも耳が遠いようね~。こりゃ、大変だ~」といわれていたらしい・・・。

そんな冗談言われているとは、まったく耳に入っていなかったわ・・・。
Auxiliary Nurseさんたちには日本語だったらいつでも耳に入ってくるんだけど、英語はスイッチ・オフできるのよ、だからみんなの会話まったく聞いてなかったわ、といったら

「”Oi Listen!”って日本語でなんていうの?」と聞かれたので
「オイ!聞いてよ!」と教えておいた。

その後、みんな面白がって「オイ!キイテヨ!」を使い始めた。
でもみんなの発音だとどうしても「聞いてよ」じゃなくて「来てよ」に聞こえるんだけど。

仕事中は英語はめったにスイッチ・オフしないけどね・・・・。


ホスピスへの寄付

以前の記事(ホスピスを支えるちから)にも書いたことがあるが、イギリスのチャリティ団体の運営するホスピスはたくさんの人々の善意によって支えられている。

ホスピスに寄付されるものは金銭だけでなく、不要になった日用品、家具や洋服(ホスピスのバザーやチャリティショップで売られる)。そしてボランティアの人々のサポート。

今日のお昼どき、ホスピスの前に小さなバンがきて次々に大きな段ボール箱を運んできた。その中身はたくさんのバラの花やキレイなフラワーアレンジメントの数々。大きな段ボール箱4箱分ものステキな花が運ばれてきた。
結婚式で使われたお花らしく、そのカップルがホスピスにお花を寄付してくれたのだ。
早速ホスピスのいたるところにこれらの花々が飾られた。

お葬式のお花(こちらのお葬式の花は真っ白ではなく、結構カラフルなものも多い)を寄付してくれる人もいる。

また亡くなった患者さんの家族がたくさんの服、パジャマやガウン、スリッパなどを寄付してくれることもある。ホスピスに入院してくる患者さんはたいてい自分の服やパジャマを持ってくるが、汚してしまったりして代わりが無いときにこうして寄付されたものは使わせてもらっている。

趣味で作ったからと患者さんのベットのためにパッチワークでできたベットカバーを持ち込んでくれる人。

ホスピスの広大な庭にあるベンチを見るとネームプレートが入っている。
このホスピスの患者さんだった家族から思い出にと寄付されたものだ。
ホスピスの患者さんや家族、スタッフもこれらのベンチで休憩したりおしゃべりしたりしている。

金銭だけでなく、こうした一つ一つの心遣いもホスピスを支えている力になっているんだなと思う。

自分の人生

先日新しく働き始めた補助看護師(Auxiliary Nurse)と話す機会があったので「仕事慣れてきた?」と聞いてみた。
「うん。すごくいい職場だし、仕事もたのしいわ。」と笑顔で言ってくれた。

「でもやっぱり患者さんがなくなったり、状態が悪くなっていくのを見るのは悲しい・・」とも言っていた。

彼女は以前はナーシングホームのようなところで働いていたので患者さんが亡くなる場面とは無縁だったわけではないが、やはりホスピスのほうが確率的には患者さんの死に直面する機会がおおいようだ。

ここで働くようになって自分の人生についてもいろいろ考えるようになった、とも言っていた。
そして、いままで何気なく過ごしてきた時間だけど、もしも自分が治る見込みの無い病気になったら、自分はどうしたいのか、最後のときをどう過ごしたいのかと。


私もよく考える。一度しかない自分の人生をどう生きるのか。

自分がしたいことは何なのか。

やらないで後悔していることはないか。

やらないで後悔するよりも、後悔しないようにやってみるほうがいいのではないか。

自分の人生が満足したものか、納得できるものかどうかは多分死ぬときにでも分からないかもしれない。

少なくとも、いつかそう思えるように今の時間を大切に、毎日を過ごしていくことが大事なのかなと思う。


乳房のチェックをしよう&スメアテストを受けよう

最近、身近な人が乳がんと診断され、腫瘍摘出を受けた。
乳房にしこりがある、と気づいた彼女。即GP(かかりつけ医)を受診、そしてすぐに専門医に紹介され受診。
しこりを発見し3週間以内には腫瘍摘出を受けることができた。
そしてさらに治療が必要ということで現在も彼女は治療中。
かなり精神的にショックを受けているようで、心配・・・。

そんな中さらに、悪い知らせが・・・。
胸にしこりがあるから細胞を取って調べるというという知らせがほかの知人からあった。
彼女の場合もしこりに気づき、GP(かかりつけ医)即受診、検査となったが、検査までの待ち時間は約2週間。


イギリスのヘルスサービス(NHS)は待たされる・対応が遅すぎる、と聞くが、やればできるじゃないか・・・と感心した。
(日本の病院だったら当たり前のことなんだろうけど)


こちらのGP(かかりつけ医)登録したとき、問診をしてくれた看護師に
「乳房チェックは毎月しているか?」と聞かれた。
「No」と答えると、「ダメじゃないの!」とおこられた。
「毎月、生理が終わった後くらいに絶対にチェックしなさい。忘れちゃダメよ!」としつこく言われた。

鏡をみて形状の異常が無いか。変な陥没が無いか。
横になり、乳房全体を手で触り、しこりが無いか調べるように言われた。


また、イギリス在住の方、Cervical Screening(通称スメアテスト:smear test)はちゃんと受けてますか?
25歳以上の方でGP登録をしていると招待状がきます。
子宮頚部にアブノーマルな細胞が無いか調べるものです。(アブノーマルな細胞=癌ではないので、誤解されませんように)

私がこの国のGPに初めて登録したのはたしか27歳のとき。
登録時の看護師の問診で「スメアテストをいつ受けたか?」と聞かれ
「一度もうけていない」といったら「ダメじゃないの!」とおこらた。
「あなたは看護師なんでしょう!」とため息までおおげさにつかれた・・・。
即予約を取らされて、スメアテスト初体験。

NHSのCervical Screening Programmeによると25歳になるとGPからスメアテストを受けるよう招待状が届くそう。(GP登録したときは20か21歳ごろから受けたほうがよいといわれた気もするが・・・)
そして49歳までは3年ごとに検査を受けるように通知が来る。
50歳以上は5年ごと。

もちろん強制検査ではないので、拒否することもできるが、無料だし、受けておいたほうがいいのではと思う。

検査の招待状をもらったらGPに電話し、予約をとる。
(生理の日は避けて。)

たいてい、看護師が検査をしてくれる。
下着を取ってベットに横になる。(スカートをはいていくといいかも)
看護師が潤滑ゼリーを塗ったプラスチック製の器具を膣にいれる。
この深呼吸してリラックスするように心がけると痛くない。緊張するといたくなっちゃう・・・。
看護師がその器具を膣の中で少し広げるので、ちょっと圧迫感があるかも。
そして綿棒の長いようなもので子宮頚部をこする様な感じで細胞をとる。
所要時間3・4分。

私はイギリスに来て2回このスメアテストを受けたが、チクッとした感じや圧迫感があって変な感じはしたけど、痛くて我慢できないような検査ではないのでまだ受けたことのない人は受けることをお勧め。

検査結果は4~6週間くらいで分かる。
GPによって異常が無ければ連絡しないところもある。気になる人は問い合わせの電話をすれば教えてくれる。
親切なところだと、看護師が結果を電話で知らせてくれる。

再検査やアブノーマルな細胞が出たといわれてもあわてないで。
アブノーマル=癌というわけではないので。その後もちゃんとフォローアップで検査、経過観察してくれる。

乳房のチェックやスメアテスト。
異常の早期発見のためにもできることはやっていったほうがいいと思うので、迷っている人がいたらお勧めします。

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