イギリスのホスピスで働き始めて3年目。仕事にもだいぶ慣れてきたが、就職したてのころは戸惑ったことが多かった。
それは・・・病院に当たり前のようにあるものがホスピスにはない

私は病院に併設されているホスピス・緩和ケア病棟ではなく、ホスピスのみの独立した施設で働いている。

病院にあって、このホスピスにないもの。それは・・・

救急カート
挿管セット(気道確保のためのチューブや器具類)やアンビューバック
ホスピスで、蘇生をしなければならない状況になることは、まずない。それは事前に蘇生について話し合われているかホスピス入院時に同意の上入院しているので。レスパイト・ケア(患者さんの介護者、家族の休養のための一時入院)の場合、本人の希望が強い場合は蘇生をする予定でいる場合もあるが。

では、救急カートがないのに、蘇生が必要になった場合どうするのか・・・?
「999(イギリスの消防、または救急車要請の緊急用番号)」に電話して救急車とParamedic(病院移送時に緊急医療処置を施すことができる救急医療士)を呼ばなくてはいけない。
「999」をしなければならないときはめったにないが、私が就職してから一度だけあった・・・。なんと、エアーアンビュランス(救急ヘリコプター)が登場したそう。(私は休みだったので実際には見てない)
これは本当に稀なケースで、たいてい蘇生が必要な患者さんの状態が悪くなったときは近辺のNHSの病院に転送して治療をうけてもらい、おちついたらホスピスに戻ってくるという形をとっている。

心電図
簡単な3誘導のものすらない。しかし、ターミナルケア目的ではなく、症状コントロール目的やレスパイト・ケアで入院している患者さんに心疾患が疑われたときは心電図をとり詳しく調べる必要があるので、そのときは近くのGP診療所から心電図を借りてきている。またはNHSの病院に患者さんを転送し精査してもらうことになる。

酸素などの中央配管
酸素吸入も呼吸苦がなければ行わないケースがほとんど。そして私の働いているホスピスはもともと昔の貴族の館を改装しホスピスになったので、そういった配管が設備されていない。
酸素ボンベと酸素濃縮式供給装置が2台あるだけ。
酸素吸入はすべての患者さんにするというわけではなく、ターミナルであっても呼吸困難による苦痛がなければ酸素投与はしていない。

あってもめったに使わないもの
吸引器
痰吸引は苦痛を伴う処置なのでめったに行われない。
デス・ラッテ(死前喘鳴)に対してはずいぶん前の記事にも書いたが、Death rattleは吸引では取り除くことができないばかりか吸引自体が患者にとっての苦痛が大きいため、気道の分泌物によって苦痛がない限りはあまり行われていない。
またホスピスではターミナル期の患者さんには補液は行われない。過剰な補液は浮腫、気道内の分泌物の増加をまねき、患者さんにとって苦痛になってしまうから。



ほかにもまだまだありそうです。
今度はホスピスにあって病院にないものを探してみようと思います。