英国ホスピスコラム


イギリスの病院でマクミラン緩和ケア専門看護師
(Macmillan Palliative Care Clinical Nurse Specialist)として働くナースのブログ

2005年12月

ホスピスでのクリスマス

本来のルーティーンの勤務だったら私はクリスマスは休みなのだけど、お正月にどうしても休みが欲しかったので、無理を言って勤務を変えてもらった。おかげで、7連続夜勤、3日休み、4連続夜勤という勤務になってしまったが、正月のため、がまん、がまん・・・・。

というわけで24日から4連続夜勤をしている。
私の働いているホスピスはイギリス人ばかりでクリスマス・オフの争奪戦は毎年すさまじいものがある・・・。そして勤務しているスタッフもどこか上の空で、うきうきしている。
看護師のオフィスにはたくさんのお菓子、飲み物が用意され、暇を見つけてはみんなで座って食べてクリスマス気分を味わっている。

24日の夜の夜勤スタッフには特別な任務がある。
それは・・・

患者さんが寝ている間にプレゼントを配ること。プレゼント
つまり、サンタクロース役。

私は2年連続でこの役をやっている。

去年は患者さんが寝静まり、そーっと枕元にプレゼントをおいて朝みんなが驚くのを楽しみに待っていたのに・・・・。
1人の患者さんを除いてみんな寝ていた・・・。その唯一おきた患者さんに
「あ、こんなところになにかあるよ。サンタクロースからのプレゼントじゃ・・・?!」
っていっても、「あ、そう。」って感じであまり興味を持ってくれなかった落ち込み

今年はというと・・・
忙しくて、患者さんが寝ている間には配りきれなかった。約2名、すでにおきていた。
サンタクロース、失格・・・。(苦笑)

ドメスティックスタッフがクリスマス風の帽子を貸してくれてかぶって朝仕事してみたものの、忙しくて帽子は結局邪魔だったし。

25日の夜、出勤していったら何人かの患者さんが家にちょっと帰って家族と過ごせて楽しかった、家族がホスピスに会いに来てくれて一緒にディナー食べたとか、とっても楽しい時間がすごせたと笑顔で話してくれた。

クリスマスはイギリス人にとって家族とともに過ごす大切な日。
多くの患者さんが楽しい時間を過ごせてよかった、よかった笑顔



「What do you see?」&「A nurses reply」

日本で言語療法士をされているspeechinukさんのブログ「Sketchbook」と
イギリスでアダプテーショントレーニング中のHarryさんのブログ「Spring haze
で興味深い記事が紹介されていたのでトラックバックさせていただきました。

Kateさんという話すことができなかった患者さんが自分のつらい気持ちをつづった詩。
そしてそれに対してLiz Hogbenさんという方が看護師からの返信という詩を書いている。

これらの詩を読んでいろいろ考えさせられた。

イギリスのホスピスには癌だけではなく、治癒が不可能な進行性、余命が限られてしまうような疾患の患者さんも緩和ケア対象として受け入れている。
そのような疾患とはパーキンソン病、運動ニューロン疾患(Motor Neuron Disease:進行性脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、原発性筋萎縮症などの総称)、進行性核上性麻痺、他系統萎縮症、クロイツフェルトヤコブ病など。

これらの疾患の患者さんは主に「レスパイトケア」と呼ばれる患者さんの介護者や家族に休養をとってもらう目的で1週間または2週間ほどホスピスに入院してもらうことが多い。

Motor Neuron Diseaseのダイアナ(仮名)という患者さんが入院していた。
彼女は病気の進行により、手も足も、自分で動かすことはできず、話すこともできなくなっていた。もちろんナースコールを押すことすらできなかった。
彼女はすべてにおいて介助が必要だった。

ダイアナとコミュニケーションを図るのは容易ではなかった。
かすかに動く首を縦に振るか横に振るか、目の動きでスタッフは彼女の意思を読み取っていた。
スタッフはYes、Noで答えられるような質問をつかって彼女の意思を読み取ろうとするが、それでもわからないときは、アルファベットが書かれた文字盤を使い、スタッフが「A?」「B?」「C?」とアルファベットひとつづつを読み上げ、彼女は首を動かして単語をつづり、意思を伝える。

ある日、ダイアナは誤嚥性肺炎を起こし、このままなくなるのではないかといわれるほど容態が悪化した。
そのときの彼女は首を動かしているのか、いないのかわからないほどで、目を見開き何かを訴えようとしている様子はあるのに、私たちスタッフはダイアナが何を伝えたいのかわからないことが多かった。

体の向きを変えたいのか?

枕の位置が悪いのか?

痛みがあるのか?

呼吸が苦しいのか?

のどが渇いているのか?

排便をしたいのか?

思いつく限りの質問を並べてみたが、ダイアナの首はかすかに動くだけで、縦に振られているのか横に振られているのかわからなかった。
そして、ダイアナは目を見開いてスタッフを見つめていた。

アルファベットの文字盤を使ってAからZまで言っても、首はどこで振られたのかもわからなかった。

ほかのスタッフとともに、できる限りの時間を費やしたが、結局私たちは彼女の意志を読むことができず、謝るしかなかった・・・。

そんなときあるスタッフが
「ダイアナは私たちの言うことがわかっていないんじゃ・・・。」といった。

たしかにそんな疑問がわいてきてもおかしくない状況だと思った。
思いつく限りのケアを試みても彼女は眼を見開いて私たちを見つめていたから・・・。


ある日、彼女のだんなさんの調子が悪くなって入院しなくてはいけないかもと電話があった。
娘さんがダイアナに直接は話したいというので受話器を耳に当てた

娘さんがだんなさんの状態を話すかすかな声が受話器からもれて聞こえてきた。
するとダイアナは目をぱちぱちとさせ、呼吸が速くなり、泣き出したのだ・・・。

ダイアナはちゃんとわかっている。ただ意思が伝えられないだけなのだ、と確信した。

何とか彼女の言いたいことを理解したいとスタッフみんなが思っているが、かすかな首の動き、眼球の動きだけで読み取るのは容易ではない。
そして、時間という重い壁ものしかかってくる。
少ないときはスタッフ2人で、全介助が必要な患者さん、ターミナル状態の患者さん、そしてその家族すべての人にゆっくりと時間をかけてケアを行うというのは不可能だ・・・。
申し訳なさにいっぱいになりながら、ケアをする。

そして、医療現場での理想と現実のギャップに苦しんでしまう。

でも、医療者はそのギャップの苦しみを放棄してはいけない
患者さん、家族の思いを理解しようとする姿勢をなくしてはいけない
かといってそのギャップから生じるストレスに押しつぶされるようなことがあってもいけない

そのギャップを受け止めること

自分のベストを尽くすこと

一人で悩まず、スタッフみんなで協力すること

一人の力ではどうにもならないこともあることがあることも忘れないで

医療・看護はチームワークが必要不可欠だから

そして何よりも、医療者一人一人が、患者さん・家族の方の側に立ってケアをしようとする思いをなくさないことが大切だと思う

Renewal of Registration

イギリスの看護師免許は日本の看護師免許とは違い、有効期限があって3年ごとに更新が必要。
早いもので私も来年1月でイギリスの看護師免許を取得して3年になる。
先週その更新のためのNMC(Nursing Midwifery Council:イギリスの看護師・助産師の免許を発行している機関)から書類が届いた。

更新の条件となるのは
・過去3年間に5日以上(35時間以上)自分の業務に関係した勉強に参加していること
・過去5年間に100日以上(750時間以上)看護師として業務を行っていること

また警察からの警告、有罪判決を受けているかを申告しなくてはいけない

これらの該当項目にチェックを入れてサインをするだけ

そしてもちろん、更新費用。現在43ポンド。私が免許を取った当時は確か30ポンド台だった気がするのに、値上がりしている。

この更新書類は通常免許の有効期限が切れる6週間前までに郵送されるらしい。

しかし、私は2003年の1月9日に免許が発行されていたので、てっきり有効期限は2006年の1月9日だと思い込んでいた・・・。
それなのにNMCからは今月に入って更新書類が届いていなかったから、不安になってきた。

さらに私の不安をあおるかのように、同僚が
「たいてい2ヶ月前にはくると思う。過去にNMCの手続きが遅れて数週間仕事ができなかった(もちろん給料も払われず)スタッフがいるから絶対確認したほうがいい」というではないか・・・。

    まさか古い住所に送られているんじゃ・・・!

    もしかしてNMCとろいからまだ送ってもいないのでは・・・・!!

    これは絶対NMCのミスだ・・・!!!


・・・などなど。私のNMC被害妄想は拡大していった(苦笑)

アダプテーショントレーニング時代、NMCに問い合わせの電話をしても何分も待たされ、いい加減な対応をされていたので、気合を入れて(?)電話した。

意外にもあっさりと電話はつながり、私の名前と免許番号を確認すると
「あなたの免許は1月31日まで有効です。来週中にも書類を郵送します」との返事。

あ、それならいいわ。ありがとう。とあっさり電話を切ろうとした私に
「住所を確認させてください」と丁寧な対応にちょっと拍子抜け。

私はアダプテーショントレーニングがおわたっときにNMCから「あなたのトレーニングは認めない」だの、いちゃもんをつけられたこともあり、2度も住所変更の確認をしておいたにもかかわらず、大切な書類を旧住所に送られたために、1ヶ月ほど待ちぼうけを食らったりと、NMCに対してはいい思い出がなかった。
さらに私の友人の中にもNMCのいい加減差に参っている人は多かったので、今回もぜったいNMCが悪いんだ!と決め付けてしまった私・・・。ちょっと反省。落ち込み

この更新書類を返送すると10日以内(土日をのぞいて)に新しい免許を発行してくれるという。
ほんとに、あのMNCがたった10日でできるの・・・といまだにかすかな疑いは晴れないけど(苦笑)

まあ、1月31日まではまだ1ヶ月以上あるので、それまでには届くでしょう・・・。


私と英語 2

私の英語はけっこう日本人アクセントが強いと思う。
日本人特有の問題も抱えている。
それは・・・「R」と「L」の発音がきちんとできないし、聞き分けもいまいち。
たとえば「right」と 「light」。単語だけ聞いたらどっちかよくわからない。でも、文章で聞けば前後の意味からどちらの単語かは区別がつくのだけど。

私の苦手な発音の単語といえば・・・

Pillow=枕
患者さんに、「枕これでいい?」「枕の位置変えましょうか?」と聞くときまって
「え?なに?」「なにするの?」と聞き返される・・・。

Suppository=座薬
「座薬入れますよ~」というと患者さんにもスタッフにも通じてはいるけど
「H iがSuppositoryっていうとなんかかわいいのよね~。もう一回言ってみて」
となぜかリクエストを受けたことが数回・・・。

Thick(=厚い、とろみのある)とSick(=病人、病気、吐き気)
こちらに嚥下障害のある患者さん向けの液体にとろみをつける、Thick and Easyというものがある(日本でいうトロメリンみたいなの)
「あの患者さんにはThick and easy入れてお茶飲ませてね」と補助看護師さんにお願いしたら????な顔している
「もしかして、Sick and easyって聞こえた・・・?」と聞いてみると、
彼女はくすっと笑って「YES。」

Bleeding(=出血)とBreathing(=呼吸)
ある日の申し送り。鼻血が止まらなかった患者さんがいて、呼吸困難もある人だった。
「No more bleeding, but he was having problem with his breathing.」
といったら「え?呼吸?出血?」と日勤さん。
ボディーランゲージを交えて説明したところ理解していただけた。
No more breathing(呼吸してない)だったら大変です・・・。

Hazel(ヘイゼル)とHeather(ヘザー)
スタッフにHazelとHetherという名前の人がいる。
私がHazelというとなぜかHeatherに聞こえてしまうらしい
ほかのスタッフに特訓してもらったがなかなかうまくいかない・・・。
しかし、「ヘイゾオ」といってみたらどうやら「Hezel」に聞こえるらしい。
それ以来、私の中では彼女の名前は「平蔵」
「平蔵~!」と呼んで返事が返ってくるのがなんだかおかしい気分。

英語が通じないときの私の手段といえば・・・

・ボディーランゲージ(恥をすて、身振り手振り)
・絵を描く(けして絵は得意ではないが・・・)
・紙に単語を書く 
・電子辞書つかう(英英辞書も入っているので相手に見せることもできる)

そして私の奥の手は・・・
「通訳」をつかう。
どうしても私の日本人アクセントの英語がわからなかった患者さんがいた。
そこで、補助看護師さんに通訳を頼んだ。(補助看護師さんたちは私の言いたいことをわかってくれる)
そのお礼として?身体でかえさせていただきました
(補助看護師さんたちの仕事をいつもよりたくさん手伝っただけだけど・・・)

以前は英語が通じなかったりで結構落ち込んだりしていたけど、最近そういうことでは落ち込んでないかも?
やはり間違いを恐れずにはなす図太い神経になったということか・・・?笑顔汗


そういえば、Wound(創部)の発音も苦手。
アダプテーショントレーニング中、スタッフになってからも外科系のプライベートホスピタルで働いていたことがあるが、このWoundは頻繁に使う単語だったが結局マスターできなかった。
いいのかわるいのか、ほかのスタッフのほうが、私の変なWoundの発音になれてしまって、私が間違って発音しようがみんな理解してくれるようになっていた。
患者さんと話すときは傷口を指差して話していたら理解してくれていたので、さほど問題にもならず。
それでも、何とか発音できるようにと特訓していたのだが。
ある看護師さんに
「もっと唇突き出して、う~って。ほらもっと、相手にキスする感じでドキドキ小」って言われたっけ。
キスしたくないような相手に言うときはどうしましょ・・・。

天国での再会を願って

リンクをさせていただいていたスタートラインの管理人の輝さんが先日天国に旅立った。

輝さんはブログでいつも「がんばります」といっていた。
でも、輝さんが必死に前向きになろう、そして癌であるという現実から目をそらさず向き合っていた姿勢はひしひしと伝わっていて痛々しいくらいだった。

応援したくて、コメントしようと思ってもなかなか言葉が浮かばなかった。

輝さんは亡くなる前にお姉さんにブログの存在を伝え、何かあったら更新して欲しいと言い残していたそう。そして、輝さん自身が生前に書いたメッセージが公開されていた。

みんなさんに会えた事、癌だと分かってから一番嬉しい出来事でした。辛い日も、温かいコメントを読んで笑顔が取り戻せました。私が生きたい!心からそう思えたのも、いつも笑顔で過ごせたのも、この場があって、みんなさんがいてくれたお陰です。ありがとうございました。みんなさんに出会えて良かったです。とっても幸せな時間が過ごせました。もっともっと語りたい事があったけど、続きは天国で再会した時に残しておきます。これからは私が、いつもみなさんを空の上から応援しています。今まで、ありがとうございました。また、お会いしましょうね!

このメッセージを読んだとき、思わす涙があふれた。

輝さんの自室からはPalliative careに関する本がたくさんあり、grief careのところに付箋もついていたそう。

死と向き合い、その苦しみの中でも他人への思いやりを忘れることなく。
前向きに一生懸命生きていた輝さん。

心からご冥福をお祈りします。

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