英国ホスピスコラム


イギリスの病院でマクミラン緩和ケア専門看護師
(Macmillan Palliative Care Clinical Nurse Specialist)として働くナースのブログ

2005年01月

Shortfall of Diamorphine

年末にTVや新聞などのニュースで目にした人もいると思うが、現在イギリスでDiamorphineの供給不足が懸念されている。
イギリス内のDiamorphineの供給の約70%を占める主要会社が供給を中断するためである。

詳しくは下記のニュースを参考に・・・
テレビMedical News Today : Diamorphine supplier liases with UK Dept of Health to sort out shortage
テレビBBC NEWS : NHS painkiller shortage warning
テレビDepartment of Health : Guidance on use and supply of diamorphine

Diamorphineは緩和ケア、ICU、A&Eなどで鎮痛に用いられる麻薬。特に緩和ケアにおいては使用頻度は高い。Diamorphineは水溶性が高いので、少量の溶液で投与することが可能なためである。
内服が困難な場合などで、Syringe Driverと呼ばれる持続皮下注射の機械で投与するときに、よく選択される麻薬でもある。Syringe Driverは日本の文庫本ほどの大きさの機械で、10MLまたは20MLの注射器に薬品を詰めてセットし、翼状針を上腕、大腿、胸部などの皮下に挿入し、持続皮下投与を行うことができる。

このニュース以来、私の働くホスピスも変化があった。Diamorphineではなく、OxyNorm(Oxycodone)が使われるようになった。Oxycodoneは効果も副作用もモルヒネと似ている。大きな違いはDiamorphineは少量の注射用水などで溶解して大量のDiamorphineが投与できるのに対し、OxyNormは1ml中10mgのOxycodoneが含まれているため、Syringe Driverで少量のOxyNormを投与するときはいいが、大量に投与しなければならない場合、問題が出てくる。

例えば患者さんの痛みが強く大量の麻薬をSyringe Driverで投与したい時。24時間に200mgのDiamorphineをSyringe Driverで投与したい時、他の薬品を加えても10mlの注射器に薬品を詰めてSyringe Driverにセットすることは可能。しかし、OxyNormの場合、24時間に200mgとなると容量は20mlにもなり、他の薬品を加えて投与したい場合、とても20mlの注射器には詰めきれない。Syringe Driverを2台使用するか、半量をセットして12時間毎に詰め替えていくことになる。(たいていは24時間毎に詰め替えている)

また薬品を準備するとき200mgのOxyNormを使うとなると20アンプルも必要になり、アンプルカットするのも手間がかかることになる。(OxyNormは1アンプル中10mg。Diamorphineは5,10,30,100,500mgのアンプルがある)

早く十分なDiamorphineの供給がされることを願うばかりだが、なによりも患者さんがこのために苦痛を受けることのないことが最も重要。

参考Website : NetDoctor.co.uk
注射Diamorphine
注射OxyNorm

最後のNew Year

昨日は2005年初仕事だった。同僚の夜勤スタッフがとても興味深い話を教えてくれた。

ベン(仮名)は60代の男性で年末にターミナルケア目的で入院してきた。転移性の大腸癌と診断されたのはなんと2004年11月。急激な体重減少と体調不良で本人もなにかシリアスな病気なのでは・・・と考えてはいたらしい。
ベンは食欲もなく、吐気もするので食事はほとんどとれず、水分をとるのがやっとというかんじだった。

大晦日の夜、ベンは夜勤スタッフに
「12時になる前におこして欲しい。自分にとってこれが最後のNew Yearになるから・・・」
とお願いしたそうだ。
そして約束通り12時前に夜勤スタッフはベンを起こし、New Yearを知らせる鐘が聞こえるように窓をあけ、シャンパンでみんなで乾杯したそうだ。ベンも少しだけだったがシャンパンを嬉しそうに飲んだらしい。
ベンは「ありがとう。」といって微笑み、そして眠りについたそうだ。

「最後のNew Year」と言ったベンの心の中はきっとたくさんの思いを抱えていたに違いない・・・・。
プロフィール

hi_hospiceuk

Hi へのメール
記事検索
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ