英国ホスピスコラム


イギリスの病院でマクミラン緩和ケア専門看護師
(Macmillan Palliative Care Clinical Nurse Specialist)として働くナースのブログ

イギリスでの在宅緩和ケアの現状(1)

親しくさせていただいている日本の緩和ケアの先生より
「がんで看取りを迎える患者さんはどれ位看取りの場所を選べるのでしょうか?」
という質問がありまして・・・。

先生の勧めもあり、メールでのやり取りを記事にさせていただきました。ありがとうございます。


イギリスでは、がん患者さんに最期をどこで過ごしたいかという意思確認をすることを推奨しています。
いつ、そういった話をするかというのは患者さんの状態や本人の気持ちの問題もあるので、早くからそういう話をしている人もいれば、かなり状態が悪くなってもそういった話をしたくないという方もいます。もちろん患者さんの意思も代わることだってあります。
誰がするか、というと、たいていはコミュニティのマクミランナース、GPなど、患者さんと良好な信頼関係が築けているヘルスケアプロフェッショナルが話をして記録しておきます。
Advenced Care Planingも参考になるかもしれません。
http://www.endoflifecareforadults.nhs.uk/publications/pubacpguide
 
 
がんの患者さんで、病院レベルでの治療が必要なくなった時点、そうなりそうなときに、患者さんに家に帰りたいかききます。
家に帰れるほど症状コントロールができていない場合はホスピスをすすめます。
症状はコントロールできているが、独居でケア度が高すぎる、24時間ケアが必要、な場合はナーシングホーム(長期療養型看護施設)を勧めることもあります。
 
病院にいたいという選択肢は患者さんには残念ながらありません。(移送できないほど状態が悪い場合を除く)
NHSの急性期病院のベットは、治療が必要な人のためであり、ご存知のとおり、Waiting listもあります。
病院での治療の必要のない患者さんのためのものではないのです。
 
 
実際、わたしの仕事(急性病院でのマクミランナース)の立場から言うと、患者さんが家に帰りたい(死にたい)といえば・・・
・移送時に死亡する可能性のないこと
・症状コントロールがある程度できている
・患者さんが必要とするケアのレベルが在宅でマネージできるレベル
・家で最後を迎えたいという本人の意思がはっきりしている。本人に意思決定の能力がある。
・住居の問題がないこと(電動ベットがおけるスペース、そのた必要な介護物品等の設置が可能であること)
以上の条件を満たしていれば、家に帰れます。
 
終末期の退院の場合、患者さんによって多少違いますが、このような手配が必要になります。
・在宅のマクミランナースに連絡、患者・家族のサポート、GP,訪問看護師のサポートの依頼
・電動ベットの手配(電動ベットを受け入れてもらわないと、ケアラー(介護士)にHealth and Safetyを理由に介護を断られるのでこれは譲れません)
・その他必要な物品手配(酸素、ポータブルトイレなど)
・ケアラーの手配(最大1日4回訪問といわれますが、私は最大8時間滞在をおねがいしたこともあります)
・マリキューリーナース(夜間夜10時から朝8時ごろまで滞在してくれるのナースの手配)
・訪問看護師の依頼(シリンジドライバー・持続皮下注射の管理)
・GP(かかりつけ医)の往診依頼(死亡診断書を書いてもらうため、退院後できるだけ早く往診してもらう)
 
Londonの一部では幸運にもHospice at Homeというサービスがあります
Hospice at Homeでは、ホスピスから患者さん宅に緩和ケアの経験のあるケアラーを速やかに派遣してくれます。
即日依頼でも可能のこともあります。
 
先々週、腎不全、心不全末期の患者さんが家に帰りたいといわれました。
その患者さん、独居で家族は遠方にすんでいる人でした。
症状はなんとかコントロールできているレベルでしたが、急激に悪くなるのは目に見えていました。
幸運にもこの患者さん、Hospice at homeのカバーするエリアに住んでいたのです。
Hospice at Homeに依頼を出して電話をしたら、翌日夕方から24時間ケアを開始できるといわれました。
(ちなみに24時間ケアは最大2週間までだそうです)
患者さんが一人暮らしで、ほぼ寝たきりだったので、最初のケアラーが来たときに家の鍵を開けれる人がいなかったので、どうやって家に入ってもらおうか、救急車で患者さんが到着するときにあわせて外で待機していてもらったらいいのか困って電話したら、病院にケアラーを派遣してしてくれて、患者さんに家まで付き添ってくれました。
このHospice at Homeのおかげで、この患者さんは「家に帰りたい」といって準備を始めた翌日午後に退院しました。
 
文章にしてしまうと、あっさり退院したかのように見えますけど、かなり大変でした。
この患者さん、独居で、家の鍵を持っている隣の人の電話番号も知らないし、友達もいないし、家族は遠方に住んでいるしで、在宅酸素などの配達ができなかったんです・・・。もう、とにかくいろいろなところに電話しまくって、酸素を家に設置できたときには、病棟で退院コーディネーターと抱き合いました。
おまけにこの患者さんと平行して、もう一人家に帰りたいという患者さんがいたので、たいへんでした。
話がちょっとそれてしまいました。
 
 
イギリスではすべてNHSでカバーされますから、患者負担は無しです。
このような終末期の退院の場合、退院後の医療・介護の費用の方は患者さんが登録しているGPのPrimary Care Trust(PCT)が全て負担します。
そのためには退院前にFast Track NHS Continuing Healthcare FundingをPCTに申請しなくてはなりません
(15ページくらいの書類なのですが、私たちマクミランナースが主にこの申請をします)
この申請を受けたPCTは24時間以内にこの申請を受け入れるか、却下するかの判断をしなくてはなりません。
「状態が急激に悪くなっており、予後数日から数週間」
「治療手段はなく、緩和ケア、終末期ケアが必要」
「患者本人が家で最期を過ごすことを望んでいる」
に当てはまっていれば、ほぼ申請は通ります。いままで何通もこの申請をしましたが、私は却下されたことはありません。
 
イギリスの急性期病院のベットを確保する費用を考えると、在宅で患者を看たほうがコスト的には安いといわれていますので、在宅は推奨されています。
ホスピスの待ち時間も日本と違ってとても短いです。早ければ、翌日、平均的に2・3日中には受け入れてもらえます。
London西部にあるとあるホスピスだけは、待ち時間が以上に長くて、ターミナルケでも7日待たされました。でもこのホスピスの待ち時間の長さが問題になって、他のホスピスがかわりに受け入れてくれるようになったので、ずいぶん助かっています。
 

イギリスでの在宅緩和ケアの現状(2)につづきます

*編集しようかとも思ったのですが、忙しくて時間がなかったので、メールの文章をそのまま転載しました。読みにくい部分がありましたらすみません。

イギリスのがん患者の生存率

BBCでこんなニュースを発見。

UK cancer survival rates lag behind other countries
http://www.bbc.co.uk/news/health-12054984

イギリス(スコットランドを除く)のがん患者の生存率は諸外国(カナダ、オーストラリア、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク)に比べまだまだ低いようです。

特に肺癌の5年生存率はカナダが18.4%に対し、イギリスはわずか8.8%。
ほかにもイギリスは大腸がん、乳がんも他国に比べ、5年生存率が低いらしい。



British Medical Journal にも

Cancer survival in UK and Denmark lags behind that in Australia, Canada, and Sweden
http://www.bmj.com/content/341/bmj.c7372.short?rss=1&utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%253A+bmj%252Frecent+%2528Latest+from+BMJ%2529
(こちらのFull TextへのアクセスはBMAのメンバーか、Athensアカウント等が必要です)



イギリスのがん医療、更なる改善が必要です・・・。

ただいま

土曜日に日本から戻ってきました。

今回の帰国では4ヶ所で講演に招いていただきました。
お忙しい中、講演に来てくださった方々、ありがとうございました。
この講演を通して、たくさんの方と知り合うこともできました。
あわただしくて、ゆっくりお話できなかった方々、すみませんでした。

どこの会場、病院でもとてもよくしていただいて、楽しい時が過ごせました。ありがとうございました。

また、「ブログ見てます」と声をかけてくださった方も何人もいらっしゃって嬉しかったです。

手配してくださった先生方、本当にありがとうございました。



そして、今回も看護学校時代の友人グループ、日本で一緒に働いた医師や看護師の上司、緩和ケア仲間など、みんなとあっておいしいお酒や食事を楽しむことができました。

両親にもあまり出かけないようにするといっていたのに、結局予定が詰まってしまって、ほとんど実家にいることができず、ごめんなさい。
でも、いっぱいおいしいものを食べさせてもらった。いつもありがとう。

お陰様で、この2週間の滞在で体重4キロ増・・・。
これからダイエットに励みます。



PS.
イギリスは寒波が押し寄せていて、現在の気温は0℃。

そして今日はホリデー明け初出勤だったのに。
電車は信号機トラブルで大幅におくれ。
ロンドンの地下鉄はストライキ。
おかげで仕事に1時間も遅刻した。
電車がちゃんと来る日本が恋しいです・・・・・・。

日本滞在

ただいまイギリスのヒースロー空港のラウンジです。
あと1時間ほどで日本に向けて出発です♪

日本には11月下旬まで滞在しますが、その間はブログの更新やメールのお返事はできないと思います。

日本を思いっきり満喫してこようと思います。

それではまた~。

日本へのカウントダウン

最近仕事がものすごく忙しくて・・・。

同僚の緩和ケア専門看護師が先週後半、有休をとっていたものだから、院内の緩和ケア専門看護師は私だけだった。
そして緩和ケアのコンサルタント(専門医)も有休をとっていたものだから、さらに忙しさに拍車がかかっていた。
毎日3・4時間は残業して、もうくたくただった。

風邪もひいてしまい体調もすぐれなかったので、昨日の日曜日は寝て過ごしてしまった。


そんな中、何を楽しみに仕事をしていたかといえば・・・・

日本へのホリデー

やっぱり年に1回は日本へ帰って、家族にも会いたいし、友達にも会いたいし、おいしい日本食が食べたいし。


家族に会うのがメインなのだから、予定をつめすぎないようにとこころがけたつもりだけど、あれもこれもと欲張ってしまい・・・、結構予定が詰まってしまった。
せっかく声をかけてくれたのに、時間があわなくて会えなくなってしまった方々、本当にごめんなさい。
来年は余裕を持って3週間くらい有休をとろうと思うので、またこりずに声をかけてください。


また今回の帰国中、3箇所でイギリスの緩和ケアや看護についての講演の機会をいただきました。
アレンジしてくださっている先生方、ありがとうございます。
皆様にお会いできるのを楽しみにしています。



日本行きまであと11日!

あと少し、仕事がんばる!




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